(1)危機対応の方針は4つの中から選ぶ
危機管理においては、危機発生前後のどの段階でも対処の「方程式」を知っておくことが肝要です。我々はそれを「処方箋」あるいは「解毒」「毒抜き」とも呼んでいますが、危機に対応するには、最初に4つの中からその方針を選ばねばなりません。その4つとは「折れる」「戦う」「躱(かわ)す」「防ぐ」。まずこの方針を初めに決めて一貫しておかねば、たとえば、最初に謝罪をして「折れる」と決めていたのに途中で反論を始めて「戦う」に転じると、逆に不快感ばかり与えてしまって悪印象しか残らない。「折れる」と決めたらひたすら謝罪に徹することが大事ですし、事案として仮に反社会的勢力から理不尽な要求をされているケースであれば弁護士を通じて毅然と「戦う」姿勢で臨むなど、最後まで首尾一貫した方針をとることが何よりも肝心。途中で方針を変えてしまう対応がいちばんいけない。危機の本質を見極め、方程式に則って対処すれば間違いがないのです。
(2)危機対応は4段階で行う
同時に大切なのが、危機対応は「感知・解析・解毒・再生」の4つの段階を経て進めねばならないと知っておくことです。「感知」とは、その事案が会社にとってどれほどのリスクになり得るかを感じ取り、調べて知ること。そしてこの危機は今後どう展開していくだろうかを予測して、それに合わせた方針を決めることが「解析」。前述した「4つの方針」を決めるにあたってこの解析が必須になるわけです。その方針が決まれば、次は、危機の毒性を抜く、つまり被害者がいるなら謝罪や補償などを迅速に進めることで世論の処罰感情を薄めるという「解毒」。そして最後が、再び信頼を取り戻すためには何をやるべきかを考え、取り組む「再生」という段階です。
(3)コミュニケーションの勘所を知る
危機においてはすべての利害関係者のウェルビーイングを踏まえた説明を行わねばなりません。そのために必要なコミュニケーションを取るうえで、難しい5つの場面の勘所を知っておくことも肝要です。「謝る」「しかる」「説得する」「断る」「共有する」。これらは企業内でも日常的に直面する場面ですが、その勘所は実は意外と難しく、これを知っておけば危機の際にはもちろんのこと、普段のコミュニケーションでも役に立つはずです。
(4)2つのトウソウ本能を知る
危機に陥ると、人間誰しもがもつ2つの本能が、それこそ本能的に出てしまうものです。それはつまり「闘争本能」か「逃走本能」。本来は謝罪すべきところをつい反論ばかりしてしまうとか、責任をほかに押し付けて説明もせず、逃げてしまうとか。そういう本能に支配されてしまって危機管理に失敗するケースも、実は非常に多いのです。
(5)2つの見えにくい罪を知る
たとえばセクハラの概念、境界線、限度などが、ひと昔前とはずいぶんと変わっています。より厳しいモラルが求められているだけに、「罪」が見えにくくなっています。イジメについてもそう。かつてのシゴキというか、後輩を育てるつもりの言葉や行為がいまはイジメ。そうした変化を常に敏感に受け止め、知っておくことも大切です。
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如何だろう。田中氏の話には、知っているようで知らない、分かっているようで行動できていない、そんな要素が詰まっていたのではなかろうか。
が、これらは危機管理の基本でありつつも、まだほんの初歩的な概要しかお伝えできていない。田中氏の講演では、冒頭で触れた様々な不祥事例を具体的な社名を挙げ、その後の経過も詳細に振りかえりながら、その企業のどんな対応が間違っていたのか、何を誤っていたのか、何が不足していたのか、そしてどう対処すればよかったのかなどを的確に指摘し、アドバイスしている。
危機が起きてからでは間に合わない。遅すぎる。その前にぜひ、危機管理の極意を直接その耳で聞いてみては如何だろう。
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