NATO(北大西洋条約機構)は、オランダのハーグで6月24-25日に開いた首脳会合で、各国の国防・安全保障支出を、10年後の2035年までにGDP(国内総生産)比5%に引き上げることで合意した。
5%とは大きなインパクトのある数字である。従来は2%が掲げられてきたことを踏まえれば、大胆な増額だといえる。そのため、なぜ5%なのか、その根拠は何なのか、なぜ各国は合意したのか、そもそも何のための増額なのかなど、さまざまな論点が存在する。以下ではこれらの問いへの答えを探りながら、NATOにおける国防費をめぐる問題を検証することにしよう。
ハーグでの合意内容
ハーグでのNATO首脳会合で合意されたのは、2035年までにGDP(国内総生産)比5%の国防・安全保障支出を達成することだった(宣言文書の第2パラグラフ)。国防支出(中核的な国防所要:core defence requirements)が3.5%、サイバーやインフラなどの国防・安全保障関係支出(defence- and security-related spending)が1.5%という、いわば「二層方式」である。NATOの定義による国防支出には、国防省予算の他に、元軍人の年金、海洋法執行機関の一部の予算などが含まれる。
ロシアによるウクライナのクリミアの一方的かつ違法な併合を受けて、NATOは2014年9月の英ウェールズ首脳会合で、その後10年でGDP比2%の国防支出達成を目標として設定した。その際は、2%基準に「向かって動くことを目指す(aim to move towards)」という何とも曖昧な表現が用いられた。今回は、「コミットする」と端的に述べている(第2パラグラフ)。首脳会合の宣言文書であるため、それでも法的拘束力を主張することはできないが、コミットメントの度合いは高いと判断できる。……