テクノロジー

脳の拡張からAIとの融合へ——人類が直面する「ゴリラ化」と『攻殻機動隊』

2026年5月25日


<span>脳の拡張からAIとの融合へ——人類が直面する「ゴリラ化」と『攻殻機動隊』</span>

ITやAIの急激な発達により、私たちは人類史上例のない変革の渦中にいる。スマートフォンの普及からわずか十数年で大規模言語モデル(LLM)による「物語を生み出す知性」が登場し、人工汎用知能(AGI)の実現も目前に迫る中、人間の意識や価値観はどのように変容していくのか。そして、AIと人間はどのような関係を築いていくべきなのか。哲学者として「意識とは何か?」という究極のハードプロブレムと向き合い続けてきた信原幸弘氏の現状への考察と未来への問いをお届けしよう。

脳を超え身体の外へと拡張し続ける意識はどこまで行くか

 人間は技術の進歩とともに、自らの意識を身体の外側へと拡張し続けてきました。たとえば、紙を使って筆算する場面を想像してみてください。この時、計算は脳内だけで行われるのではありません。手を使って数字を書き、紙の上に文字が書き連ねられていくからこそ、計算が成立する。つまり、計算という意識的活動が脳から身体(手)、さらにノートとペンにまで拡張していると言えます。

 二十数年前、哲学者のアンディ・クラークとデイビッド・チャルマーズが共著の中で、この「意識の拡張」に言及しました。彼らが挙げた例は、記憶力があまり良くない人が常にメモ帳を持ち歩いているケース。二人によれば、メモ帳はその人にとって文字通りの「記憶」として機能している。脳内の記憶と外部のメモ帳のいずれもその人の記憶システムの一部だと言うのです。

 このメモ帳が、現代ではスマートフォンやクラウドシステムに置き換わりました。メモ帳とは比べ物にならないほど大容量で、しかも世界中の情報にアクセスできる外部記憶装置によって、私たちの意識はもはや世界規模にまで拡張していることになります。

 今後、さらに技術の発展と利用が進めば、脳科学の研究成果とITを掛け合わせたブレインテックが本格化し、脳波の情報をマーケティングに活用したり、脳信号と機械を直接接続して思考で電子機器を操作したりする「BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)」も徐々に広がっていくと思います。すでに医療・福祉分野では実用化が始まっており、麻痺した手足を動かすリハビリや義肢、視覚・聴覚の代替など、これまで不可能だったことが可能になりつつあります。将来的には、日常的な脳機能の拡張にも応用されるでしょう。……

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