全国で最も時間のかかる東京都の救急搬送
頭が痛い、胸が苦しい、もしくは目の前で人が倒れた――身近で命に関わるような緊急事態が発生したら、119番へ連絡するだろう。すると国内では、いつでもどこでも救急車が無償で駆けつける。
しかし近年、救急車の現場到着時間が遅くなっている。そうなると何が起こるか。早く医療介入すれば助かるはずの人が助からないという事態につながるのだ。例えば脳梗塞などは、少しでも早く救急車が到着すれば、命が助かるだけではなく、機能的予後(後遺症)が変わってくる。
救急患者の搬送時間は「救急車が(傷病者発生の)現場に駆けつける時間」と「現場から病院到着までにかかる時間」を合わせたトータルの時間で考えなければならない。言い換えると、「119番へ連絡して医師に引き継ぐまでの時間」で、これが2004年は30分だったが、最新データの全国平均は44.6分だ。約20年の間に全国的におよそ15分も延伸している。
またこの時間には地域差がかなりある。総務省消防庁のデータを元に、現在の都道府県別の搬送時間を早い順に並べると、東京都は搬送時間が約60分もかかり、全国でダントツのワースト1位だ。搬送に時間がかかる大きな要因としては救急患者、すなわち“救急車出動の激増”が挙げられる。2005年は全国で約528万件だった救急車出動件数が、2025年は約769万件にまで増えている。東京都は全国最多の救急出動件数で約94万件(令和7年中の速報値)。次いで全国で2番目に多いのは、大阪府の約69万件だ。
大阪府の堺市立総合医療センター副院長で救急科専門医の中田康城医師は「救急出動件数が増加した主要因は、超高齢化社会」と指摘する。
「病院全体の外来や入院でも高齢者は増えていますが、救急搬送でも高齢者が圧倒的多数です。ひとり暮らしの高齢者や老老介護のような方たちが体調を崩すと、移動手段がないこともあって救急車を呼ぶしかない」