文科省のSPRING制度「中国人留学生優遇」の真相
「中国人の留学生に返済不要の奨学金1000万円が支給されている」
こんなデマが飛び交ったのは2025年の参院選時。複数の候補者が取り上げ、SNSで大炎上した。槍玉に挙がったのは文部科学省の次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)。博士課程の優秀な学生に生活費や研究費など年間最大290万円を支給する制度だ。4年間在学すれば最大1160万円となる。
制度の受給者1万564人のうち6割が日本人学生なのだが、「中国人だけがもらっている」かのように扇動する政治家たちによって一気に拡散された。確かに4割は留学生が受給しており、そのうち中国人は3151人を占めるが、これは前述したように博士課程に進む日本人の少なさ、ひいては博士号を軽視してきた日本の企業・研究風土、博士課程を重視し、SPRINGの厳しい選考を突破できる優秀な中国人学生の多さなどが影響している。
しかし反響を受けて政府はSPRINGについて生活費の支給を日本人学生に限定すると決定。また文部科学省は「特定の国を優遇するものではない」とファクトチェックを発表した。
「でも、そのファクトがぜんぜん周知されない」
国立大学に通う日本人Fさんは嘆く。
「デマのほうばかりが拡散されて、いまも中国人が優遇されていると思っている学生は私のまわりでも本当に多いんです」
中国の地方の進学校出身で、有名私立大学に通っていたBさんは言う。
「私が通っていた大学には留学生に対する学費の減免制度があって、これを利用できたので授業料は半額でした。でも成績が優秀で、経済的理由などの条件も、人数制限もあります」
同じ大学で学んだ四川省出身のAさんも同調する。
「条件は本当に厳しいんです。とくに経済的な面は親からの仕送りや家賃の額などしっかりチェックされます。私の家庭は裕福ではまったくないんですが、家賃の8万円だけは仕送りしてくれていました。でもこの家賃だと『経済的に厳しい』とみなされず、支給対象にはなりませんでした。家賃は4万円くらいでないとダメみたいです」
また、いま全国各地の大学で留学生限定で授業料を値上げする動きが広がりつつある。「外国人優遇」という誇張された、あるいはミスリードされた世論に押されたものであるし、加えて少子化が進み日本人学生が減る中、「外国人で稼ごう」という意図もあるだろう。各大学は「留学生支援などのコスト増」を理由に挙げているが、将来的に見れば留学生が減少し、日本の国際競争力や研究力の低下につながるとの懸念も大きい。
そもそも優秀な留学生に対する奨学金制度、減免制度などは世界的に見ても一般的だ。多くの日本人留学生も海外で恩恵にあずかっている。お互いさまなのである。
ただ美大関係者が「留学生の増加に伴って、ビザの手続きなど事務方の負担は本当に増えている。そのために学費を上げるという話にもなっている」と言うように、留学生受け入れにかかる経費が増えている部分は考慮しなくてはならないだろう。