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中国勢の“水増し”に利益相反のコンサル…歪んだ指標「世界大学ランキング」で日本勢が勝てない理由

2026年6月19日


<span>中国勢の“水増し”に利益相反のコンサル…歪んだ指標「世界大学ランキング」で日本勢が勝てない理由</span>
世界大学ランキングの“実態”とは(写真はハーバード大学)

「世界大学ランキング」が発表されるたび、躍進を見せる中国やシンガポールの大学とは裏腹に、日本勢の低迷ぶりが指摘される。しかしこの指標、本当に信頼に足るものなのだろうか。「英語圏や理系に評価が偏る」とはよくいわれるが、実はそれ以外にも日本勢に不利となる評価基準があり、さらに世界では、グレーな手法による順位の“水増し”が横行している実態もある。その驚くべき裏側に迫った。

 「英語圏」「大規模」「理系」の大学を勝たせるためのランキング

「東大、またしてもアジアトップ校に届かず」

 毎年のように繰り返される、「世界大学ランキング」での日本勢低迷のニュースを嘆く声はもはや風物詩となった。急伸する中国勢やシンガポール国立大学に追い抜かれてから早10年以上経ち、差は広がるばかり。日本の高等教育の“遅れ”を批判するには格好の材料となっているわけだが、たとえばノーベル賞受賞者の数でいえば、それぞれ10人程度輩出している東大・京大は紛れもなくアジアトップだ。果たしてこの指標、本当に“丸呑み”していいものなのだろうか。

 実はその信頼性自体、大きく揺らぎつつあるといえる。ランキングの算出方法に目を凝らしてみると、いかに「恣意的な操作」に溢れた順位であるか、さらには「カネで順位を買う」という実態までもが透けて見えてくるのだ。

 そもそも日本で話題になる世界大学ランキングは、英タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)と、同じく英クアクアレリ・シモンズ(QS)がある。両社はかつて共同でランキングを作成していたが、2010年に分離。以来、研究実績などを重視するTHEと、学界・産業界からの評価を重んじるQSという独自の進化を遂げてきた。

 日本では特にTHEのほうがメディアを賑わすことが多いが、これは、同社が2017年からベネッセコーポレーションと共同で「THE日本大学ランキング」を公表していたことが大きいだろう。(同ランキングは提携解消により2025年版が最後となった)

 2025年秋に発表されたTHEの「世界大学ランキング2026」では、東京大学は26位、京都大学は61位にランクイン。今年6月18日に発表されたQSの2027年版では、東京大学が39位、京都大学が64位となった。いずれにしても、中国トップの清華大学や北京大学、それらと争うシンガポール国立大学はどれも20位以内であり、日本は大きく水を開けられているのが現状だ。

 こうして日本勢の順位が振るわない背景にあるのが、「英語圏」および「大規模大学」に有利というランキング自体の構造だ。

 例えば、これらのランキングの根幹をなす重要な指標の一つに「どれだけ他の論文に引用されたか」というものがある。「他の研究にも引用されるような論文は価値が高い」という評価基準だ。

 しかしこの指標は、オランダのエルゼビア社が運営する「スコーパス」という巨大な論文引用データベースに依存している。これは、世界中の主要な論文と、それが他の研究者に何回引用されたかという膨大な記録を集めているものだが、2023年のUNESCOによる報告書「Open Science Outlook 1」では、こうした世界のデータベースの論文の85%が英語圏に偏在していることへの懸念が表明されているのだ。実際、データベースに登録される条件の一つに、論文のタイトルと抄録(あらすじ)が英語で書かれていることがある。つまり、日本の大学が日本語を用いて国内の医療体制や製造業に向けた有用な研究を発表しても、言語的なハードルによって登録されづらいのである。ゆえに発表した論文の数や引用された数が実際よりも低く評価されてしまうのだ。

 日本の研究者が英語ネイティブでないことがハンデとなっている側面もある。豪クイーンズランド大学の天野達也准教授が2023年の研究で明らかにしたのは「非英語圏の大学の若手研究者が英語の論文を書く場合、それが却下される頻度が約2.5倍も高い」という事実だ。論文が受理された後でも、英語の表記などを直す頻度が12.5倍にまで上がるとのこと。日本語ネイティブである我々日本人は、こうしたハンデを背負って戦っているわけだ。

「規模のハンデ」も日本勢にとっては手痛い。

 研究者が100人しかいない大学と1000人いる大学では、明らかに後者のほうが発表できる論文数が多く、順位を押し上げる要因になるのだが、それを意識してか、QSは公表しているランキングデータに大学の規模も記載している。その分類はS(学生数5000人未満)からXL(学生数3万人以上)までという、洋服のサイズのような区分けだ。

 学生数が2万人台である東京大学や京都大学の分類はL(学生数1.2〜3万人)。その点においても、4~5万人規模であるシンガポール国立大学、5~6万人規模である清華大学、北京大学などよりも不利といえるだろう。

 さらに、大学ランキングには、大学の本業(研究)とは関係ない指標が色々と混入している。代表的なのは、外国人の教員や学生の割合だ。このような指標では、シンガポールなど、海外に開かれた大学ほど有利だ。最近では、QSは「サステナビリティ(持続可能性)」という指標も取り入れており、これには研究内容だけでなく、キャンパスでの環境への取り組みなども含まれる。

 これらの項目は、社会的なニーズが高まっているのは確かだが、大学のランキング指標として必要かと言われると、首を傾げる人も多いのではないだろうか。特に近年は、大学側も志願者集めのPRとして世界大学ランキングを使うようになっている。ただ、学生が大学選びの基準として、外国人学生比率を考慮するケースは一部の国際系学部などを除いてごく稀だろう。純粋な名門校の「学力・研究力」を知りたい人にとっては、これらは順位を不透明にするノイズ(不純物)として機能している側面は否めない。

 ちなみに、必ずしも日本勢が不利な条件とはいえないが、QSもTHEも理工系の研究部門の強さに依存するランキングであることは、よく知られた話だ。理系の分野では、論文の執筆ペースが速く、1本の論文に数百人の共著者が並ぶことも珍しくない。また、論文を引用し合う文化も強く、これらが大学ランキングのスコアを底上げする効果を生む。逆にいえば、経済学など社会科学に強みを持つ一橋大学などは、どんなに実力があってもランキングでは評価されにくい構造になっている。

「順位はカネで買える」 横行する“ランキングハック”の実態

 こうした“歪み”にさえ目をつぶれば、世界大学ランキングは信頼に足る指標なのかと問われると、それも「ノー」である。なぜなら、近年、世界大学ランキングのスコアアップを意図した不正が世界中で蔓延しているからだ。

 その最たる事例は、サウジアラビアの大学が行った前代未聞の「所属ロンダリング」のスキャンダルだろう。

 これは、同国のキング・アブドゥルアズィーズ大学などが、世界各国の優秀な研究者に対し、日本円にして1000万円規模の高額な報酬を支払い、彼らの「主な所属先」を同大学に変更するよう働きかけていたもの。実際に中国(12名)とスペイン(11名)の研究者がこれに応じたことで、彼らの研究実績が、サウジアラビアの大学のものとなり、スコアアップに大きく貢献したという報告がスペインの研究コンサルティング会社により発表されている。

 ランキングの「ハック」はこれにとどまらない。最近は中国の大学が大変な勢いでランキング上位を席巻しつつあるが、この裏にもグレーな手法が横行している。

 実は中国は、国を挙げて大学のランキングを上げようと取り組んでいる。論文数や被引用数が研究者の昇進や報奨金などに直結するようになっているため、「とにかく論文数を稼ぐ」という力学が働きやすいのだ。武漢大学の研究者が中国の大学100校について調査した研究(※1)によると、大学は研究者の論文発表に対し、掲載誌のランクに応じて最大数千万円の報奨金を出していることが明らかになった。

 これにより蔓延しているのが、一つの研究結果を細切れにして論文数を稼ぐ「サラミスライス」という手法や、業者が論文捏造・代筆を行う「ペーパーミル(論文工場)」の利用だ。

 これらは本来、研究者にとっては「ご法度」のはずだが、中国の学術現場では、目先の巨額報酬や昇進という「実利」が勝ってしまっているのが実情だろう。

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