米国の中間選挙が迫るにつれ、選挙後の政局に関する議論も活発化しつつある。中でも注目点は、中間選挙の敗北が現政権の「レームダック化」を招くか否かだ。再選が認められないドナルド・トランプ大統領が議会の支持を失えば、任期後半においてモメンタムを大きく失うという見方だ。
しかしながら、筆者は二つの理由からこうした見方は短絡的に過ぎると考えている。第一に、中間選挙の結果が、一部で予想されているほど政権にとって深刻なものとなるか、現時点では予断できない。第二に、トランプ政権はその目指すところと政治手法において過去の政権とは大きく異なり、通常の意味での「レームダック化」という現象は必ずしも当てはまらない。
この連載では、これまで二回にわたり中間選挙の展望について論考を行ってきた1が、本稿では選挙情勢についてアップデートするとともに、選挙結果がトランプ政権の政局運営にどのような影響を与えるか、考察を行ってみた。
中間選挙の中心的シナリオ
中間選挙の見通しについて、これまで行ってきた論考のポイントは以下の通りである。
- 中間選挙は歴史的に見て政権与党にとって不利な結果をもたらす傾向が強い。
- 他方で、近年の政治の分断で、二大政党の支持が拮抗する「接戦区」の数は大きく減少し、米国政治は議席の大きな変動が起きにくい構造に変化しつつある。
- トランプ政権の支持率は発足以来右肩下がりで低下しつつあるが、共和党支持者の支持は堅調だ。そのため、上記2.の構造的変化の中、選挙を通じて政権基盤が底割れする危険は比較的小さい。
- 今回の選挙に際し、両党はそれぞれが地盤とする州において選挙区割りの党派的な見直し(ゲリマンダリング)を推進しつつあり、その帰趨が選挙結果に影響を与える可能性がある。
- 以上を総合すると、下院については、民主党が多数を奪還する可能性は高まっているものの、大きな「ブルーウェーブ」の達成は難しく、上院については共和党が維持する可能性が高い。
前回(3月)の寄稿以降、イラン戦争を含め、内外情勢に変化は見られるものの、中間選挙の見通しについては、基本的には1.~5.の前提が引き続き妥当しているように見える。ただし、足元の状況を見ると、下院については共和党の、上院については民主党の立場に若干の改善がみられる。
ゲリマンダリング競争は民主が劣勢、「下院奪還」の壁となる可能性も
まず下院の見通しについては、米国の有力選挙分析会社クック・ポリティカル・レポート(CPR)の評価によれば、全435議席のうち、共和党が有利と見られる選挙区2が212、民主党が有利と見られる選挙区が205、接戦区が18となっている。このうち、接戦区の数は1月時点と変わっていないが、共和党が有利とされる選挙区の数が6増となっている3。このようにCPRの評価が共和党側寄りに傾いた理由は、区割り変更を取り巻く動きによるものと見られる。
周知のとおり、昨年来トランプ政権は共和党が地盤とする州(レッドステート)に対し、国勢調査と連動した通常のサイクルから逸脱する形で区割りの見直しを行うように働きかけている。これを受け、テキサスなど一部の州が新たな区割りを導入すると、カリフォルニアなど民主党が主導する州(ブルーステート)がこれに対抗する形で見直しを推進し、全国的なゲリマンダリング競争に発展している。