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トクリュウ型組織は卵――中枢である「黄身」を炙り出す捜査手法

2026年7月1日


<span>トクリュウ型組織は卵――中枢である「黄身」を炙り出す捜査手法</span>
トクリュウの関わる事件で初めて警察庁が指示権を発動

16歳の少年4人が実行犯として逮捕され、世間を驚かせた栃木県上三川町の強盗殺人事件。「匿名」で「流動的」であることが特徴とされる「トクリュウ」が、一部は「顔見知り」だった未成年4人を実行犯として集めたのは、裏を返せば警察やSNS事業者の対策が関係しているのだという。前編に続き、元警察庁サイバー警察局サイバー捜査課長の棚瀬誠氏に聞いた。

トクリュウ型の組織図は「ピラミッド」ではなく「卵」

「仮装身分捜査」では、実行犯の中に警察が混ざり込み、詐欺であれ強盗であれ、詐欺未遂や強盗予備といった一歩手前の段階で摘発し、事件を未然に防ぐというやり方もありますし、サービスエリアやコンビニに実行役が集合した段階で身分を明かし、その場で実行部隊を解体させることもあります。ターゲットは末端の実行役ではなく、首謀者と連絡を取り合いながら“現場監督”のような役回りをする、1つ格上の存在です。メンバーの中で最も中枢に近い人間を特定できれば、それだけ事件の全容に迫る手がかりを掴めることになります。

 SNSで集められる実行役には、一部には“借金まみれ”の年配者のもいるものの、やはり若者であるケースが多い。そうした若者は募集の過程で自身の身分証を開示させられ、自宅の写真を送らされ、挙句には実家の住所や家族構成までヒアリングされ、「逆らったら家族を襲うぞ」などと脅されているケースがほとんど。

 しかし私が知る範囲では、実際に闇バイトを途中で“足抜け”したからといって、メンバーの家族が襲われたケースはありません。ですから、実行役の若者がそうした脅しに怯えている場合、「大丈夫、警察が守ってやるから心配するな」と言って寄り添ってあげることも事件を防ぐうえでは有効です。実際に自宅の警戒をしつつ彼らの不安を払拭しながら、警察の捜査に協力してもらう、という方法も考えられるでしょう。

 仮に「詐欺未遂」や「強盗予備」の要件を満たしていればその時点で犯罪になりますが、ただ命じられるままに集まっただけでは犯罪にはなりません。逆に集合場所で凶器を渡されたり、ホームセンターにバールなどを買いに行き、凶器を持ってしまったりすれば、犯罪に加担することになってしまいます。そのため、警察はそうなる前の段階で止めることを目指しています。

 あくまでも「仮装身分捜査」の主眼は、強盗や詐欺を実際に実行させないことです。もし実行させてしまったら、ある意味で警察が犯罪を手伝っていることになってしまいます。実行させないことを大前提に、ピラミッドの最下層から攻めるという捜査手法ですので、中枢に迫るのが難しいという指摘は確かにその通りです。

 トクリュウ型の組織図は「ピラミッド」よりも「卵」に例えた方が分かりやすいかもしれません。中枢が卵の黄身だとすれば、割った卵の白身の形はその都度変わっていきます。この白身にアプローチすることで、中枢への手がかりを探そうとするわけです。下っ端とはいえども、現場には1つ上やその上の人間に繋がっている人間がいるはずです。実行犯の白身が5人集められれば、入り込んでいる警察以外の4人の中に、現場監督的な役割をしている人間がいるはず。その人間を特定できれば、突き上げ捜査の糸口にはなるわけです。

トクリュウの“損益分岐点”を割り込ませるために

 実際にトクリュウの首脳部を割り出すためには、押収したスマホやSNSの解析が必要になります。実行役よりもリクルーターや「道具屋」の方が首脳部に近いはずなので、そこを順を追って遡る捜査を行うのです。首脳部が誰かは分からなくても、リクルーターたちのほうが実行役よりかは頻繁に首脳部とやりとりしているはずですので、そこから首脳部の手がかりが得られることもあるでしょう。

 スマホやSNSを解析することで、SNSのアカウントなどを頻繁に変えていたとしても、地道なサイバー捜査によって「これとこれは同じ奴だな」と分かることもあります。

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