〈GIGAスクール構想〉に〈1人1台端末〉、はたまた〈ICT環境〉――。児童や生徒を抱える親でなければ、これらいかにも今風の言葉が、2019年以降の学校の“基本路線”を指すスローガンだとは思わないだろう。
現在、日本中どのような過疎地や離島でも、小中学生は学校から貸与されたタブレットやパソコンを使用して、授業にのぞんでいる。
そして今年7月には、4年後以降に導入される次期学習指導要領の“目玉”が明らかになった。情報教育を大幅に拡充するという。はたして、この変革は何を意味するのだろうか。
全国紙の文部科学省担当記者が解説する。
「次の指導要領で、中学校では現在の〈技術・家庭科〉から情報分野を独立させ、〈情報・技術科〉とする方向で議論が進んでいます。小学校では3年生以上に〈情報の領域〉を新設する見通しです。小学校で年に最大30~35コマ、中学校で35~70コマほどを見込んでいます」
この拡充の背景には、文科省が抱く危機感がある。
「最近では、ロシアや中国など外国勢力による、SNSを通じた偽情報の拡散が問題になっています。国内外から大量の情報が流れ込み、フェイクニュースが日本社会を揺るがしかねないと文科省は考えているのです。実際、文科省の幹部と話をすると“子供たちの情報リテラシーを高めなければならない”と口にしています」(同)
新たな“授業”では、
「情報リテラシーや情報セキュリティ、生成AIの使い方やプログラミングなども扱う方向です。例えば、実際に生成AIへ質問や指示を入力して回答を引き出し、その内容を正しい情報と比較するといった体験をさせるようです」(同)
文科省教育課程課の担当者は、情報教育の拡充について次のように話す。
「社会状況を踏まえると、デジタル技術の良いところと悪いところをバランスよく学ぶ必要があります。そのうえで、子供たちが、民主主義を支える“賢い情報の使い手”になれるようにすることが、課題だと考えています」
志はご大層である。しかし、情報教育が拡充されるのであれば、既存の科目を縮小せざるを得ない。
「国語や算数だけではなく、理科や音楽、図工、体育など、さまざまなところから薄く時間を取っていくという考え方です。“少しとはいえ時間を取れば、そのぶん学力が落ちるのではないか”と反応される方もいらっしゃいます」(同)
誰しも抱く懸念だろう。それでも、この担当者は「全教科が恩恵を受けることになる」と胸を張るのだ。
「例えば、算数でデータ分析の授業をするとします。そのとき、エクセルなどの技術や端末の使い方を〈情報の領域〉で学んでいれば、算数の授業もより豊かにできます。作文を書く授業も、〈情報〉で試行錯誤しながら文章を書き直したり、編集する経験を積んでおけば、国語の学びそのものが豊かになるのです」(同)
驚くほど能天気な展望を披露するのだが、そう易々と鵜呑みにできるはずもない。