<span>法治国家から「情治国家」へ―― 安倍派裏金問題で「病巣摘出」を先送りした自民党を蝕む毒</span>
裏金事件の真相は明かされないままだ

人の本性は逆境でわかる。最大派閥・安倍派を解散に追い込んだ裏金問題は典型的だった。幹部たちは、説明責任を果たすことも、問題の根本に切り込むこともしなかった。焦点をぼかし、通りいっぺんの謝罪を口にして、ほとぼりが冷めるのを待った。だから、裏金問題はことあるごとに蒸し返される。選挙の当選も禊にはならない。禊とは失敗とその責任をすべて償ったことを指すからだ。(以下、敬称略)

ふたつの「偲ぶ会」

 いま、自民党内は人事の話題一色だ。

 政権支持率が下降傾向となった高市早苗総理が内閣改造での浮上を図ろうとしているとの観測がひきもきらない。消費税減税で党内に亀裂が走る中、もともと党内基盤の強くない高市総理は、解散前に最大派閥だった旧安倍派の幹部起用も検討しているとされる。それはすなわち「裏金議員を登用するかどうか」の踏み絵を踏むことに他ならない。

 ただし、肝心の旧安倍派の中にも亀裂が走っているようだ。

 2022年の安倍晋三の死から4年、7月8日の命日を巡り、旧安倍派メンバーが集まる「偲ぶ会」が開催された。ただし、一度でなく二度。主催者はそれぞれ異なっていた。

 西村明宏(衆議院議員、当選7回、66歳)らの主催による偲ぶ会第一弾(7月8日開催)に、いわゆる五人衆の顔はなかった。五人衆とは裏金問題が表面化した際の安倍派幹部で、松野博一(衆議院議員、当選10回、63歳)、西村康稔(衆議院議員、当選9回、63歳)、萩生田光一(衆議院議員、当選8回、62歳)高木毅(元衆議院議員、当選8回、70歳、2026年衆院選に不出馬)に、離党した世耕弘成(衆議院議員、当選7回=参議院5期・衆議院2期=、63歳)を加えた5人を指す。

 派閥解散に伴う煩雑な事務処理などの責任を最後まで果たした西村明宏への信頼は、五人衆への不満と比例するように醸成されていった。裏金議員のレッテルを貼られ、辛酸をなめた落選中にも行われていた会であり、メンバー同士で様々な対応や悩みを共有してきたという。命日のこの日も、西村ら当選回数の多い数人の議員の拠出金により開催された懇親の場であったが、彼らに冷ややかな視線を向ける議員たちからは「清和研(派閥)の残金を使っている」などと根拠のない悪口で攻撃されていた。

 その1週間後の7月15日、偲ぶ会第二弾が行われた。主催は西村康稔や萩生田光一などで、先に開催された会と競うかのように動員と根回しがかけられた。結果的に、第一弾を主催した西村明宏も発起人に名前を連ね、旧安倍派OBや新人にも広く声をかけて会費制で開催されたという。同窓会さながらの雰囲気で安倍の思い出話が交わされたのも、両方の会に顔を出したメンバーが多かったからであろう。

 とはいえ、派閥の領袖だった安倍の死を悼み偲ぶはずの命日を巡り、二つの会合が別々に開催されたことで、未だ安倍に代わるリーダー的議員の不在と、旧安倍派内における主導権争いがあらわになった。

「いつからこの国は(法治国家ではなく)情治国家になったのか」

 旧安倍派の中に亀裂を走らせているのは、裏金事件の真相不明なままの幕引きと幹部の責任のとりかたに対する不満が渦巻いているからだ。

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