――ご無沙汰しております。齊藤町長とは外務省で同じロシアンスクール(※ロシア語を専門とする外交官)の先輩後輩として、本省はもとより、北方領土の国後島や、総理外遊の裏方でカザフスタンでも一緒に仕事をしました。2018年、齊藤さんが36歳で外務省を辞めて町長選挙に出馬すると聞いた時は腰を抜かしましたが、改めて政治家に転身した動機を教えてください。
子供の頃は何としてでも出たかったふるさと・北海道が、いざ離れて外から見てみたら、これほど魅力と潜在力にあふれている地なのかと気づいたのが最初のきっかけです。ただ、それだけなら国の側から支援するアプローチもありました。
決め手になったのは、外務省から北海道北部の天塩町に出向して、副町長として過ごした2年間です。国の制度をどう使うかを決めるのは、最後は現場の首長だと痛感しました。ならば自分が決める側に回ったほうが早い。そう考えていた時に出会ったのが余市でした。ぶどう栽培を始めた先人がいて、質の高い農水産物があり、ウイスキーの歴史もある。素材はすでに揃っていました。それを町の力に変える仕事なら、自分にもできるかもしれないと思ったのです。
経常収支比率は101%から88%に
――2期8年の成果と、達成できなかったことを踏まえ、3期目の抱負を聞かせてください。
ふるさと納税だけではなく、町税収入そのものが17億8000万円から18億8000万円へと8年で5.7%増えました。町民1人当たりの所得も218万円から257万円へと、2割増えています。企業の設備投資も活発になり、機械や設備にかかる固定資産税は8年で43%増。人口が減り続ける町で数字がこれだけ伸びているという事実を、まずは見ていただきたい。
一方で、人口は過去5年間で約9%減ですが、これは日本全体の課題であり、一つの町が人口増加に向けて足掻いてもどうにもなりません。人口減少を前提条件として、それでも町民一人ひとりが豊かになるような施策を実行してきたし、今後も続けていきます。
道半ばなことの代表格は、町内の人材確保です。直近で起こった例としては、退職した学童保育の職員の後任が見つからず、役場職員の有資格者を交代で投入して何とか維持していますが、とても持続可能ではない。困ったことに、これ一つをとっても一事が万事の感があって、全国どこの町でも、保育士、看護師、建設業の技術者と、同じように不足しているはずです。また、次の余市町政を支える人材を若手職員から育てようとしていますが、こちらも一朝一夕には成らぬものです。
高いお金を出せば人が集まるという単純な話ではなく、妙案はないのが正直なところですが、余市町で育った若者のUターンをはじめ、移り住みたくなる魅力ある町・余市を目指し、3期目も腰を据えて取り組んでいきます。
――税収が増えているとはいえ、第3子以降に100万円の出産・子育て応援金、小中学校の給食費無償化、物価高騰対策など、齊藤町長の就任以降、支出も膨らんでいます。余市町の財政は持続可能なのでしょうか。
まず、支出の内容からわかるとおり、意図しているのは未来の世代への再投資であり、単なる「バラマキ」との批判は当たりません。
財源論については、直近の新たな施策の原資の大部分は、ふるさと納税と、補助金をはじめとする国からの支援であり、一般財源からの支出は限定的です。余市町では、受け取る資格がある補助金を取り漏らすことがないよう、町長である自分も担当課の職員も、制度から金額に至るまで入念に研究しています。