<span>重要鉱物「対中依存」低減の最前線――「調達網多様化」の次なる焦点</span>
米国は「市場の再設計」に積極的な姿勢を見せている[国務省で開かれた重要鉱物閣僚会合で演説するバンス米副大統領=2026年2月4日、アメリカ・ワシントンDC](C)REUTERS/Jonathan Ernst

レアアース磁石の輸出をめぐり富士電機グループの日本人社員が逮捕されるなど、中国による重要鉱物輸出の「武器化」は止まらない。主要国は調達網多様化を進めてきたが、この動きはいま新たな局面に入っている。米国やG7を中心とするパートナー国の間で、特恵貿易圏の構築が具体化しつつあるのだ。ここには公正な市場価格維持や将来にわたる安定購入契約といった「市場の再設計」が伴う可能性がある。日本企業にも直接的な意味を持つ潮流だ。

米国主導で進む多国間連携の動き

 米ドナルド・トランプ政権による追加関税賦課や、ホルムズ海峡「封鎖」による物流の混乱など、地政学・経済安全保障に起因するサプライチェーン・リスクに関する日本企業の悩みは尽きない。その中で、2026年年初から特に悩みの種となっているのが、中国による重要鉱物の輸出管理強化だ。これに対処するため、重要鉱物市場の構造そのものを変えようとする多国間の取り組みが進んでいる。

 中国は近年、世界が中国に依存する重要鉱物の輸出を外交上の手段として積極的に行使する姿勢をみせている。いわゆる「経済の武器化」や経済的威圧と呼ばれるものだ。現在までの動きの起点のひとつとなったのは、2023年8月からのガリウム・ゲルマニウム関連製品を輸出管理対象としたことだろう。この後、タングステンやアンチモン、レアアースなどに輸出管理対象を段階的に拡大し、レアアースの抽出・分離等の技術も輸出禁止・制限対象とするなど、規制を強化してきた。

 なかでも、2025年11月の高市早苗首相の「存立危機事態」発言以降、日本への経済的威圧を段階的に強化している。2026年1月6日には「日本の軍事力向上に寄与するあらゆる用途・需要者」向けの軍民両用(デュアルユース)品目の輸出を禁じる輸出管理の強化を開始した。対象品目にはレアアースなどが含まれている。続いて、2月24日には、20の日本企業・団体を「輸出規制管理リスト」に、別の20社・団体を「注視リスト」に掲載し、即日施行した。さらに、6月29日にも、20の日本企業・団体が「輸出規制管理リスト」に、別の20社・団体が「注視リスト」に掲載された。掲載企業・団体には、防衛・宇宙関連企業・団体が多いが、民生分野の企業も含まれている。「輸出規制管理リスト」掲載企業には両用品目の輸出等が禁止され、「注視リスト」掲載企業には輸出許可手続が厳格化された。

 5月には邦人の中国での拘束事案も生じた。富士電機グループの日本人社員2人が「国家輸出入禁止貨物密輸罪」の疑いで拘束され、6月には逮捕された。報道によれば、輸出管理の対象であるレアアース磁石を、管理対象外とされるモーター等の加工品に組み込んで輸出し、日本で分解して磁石を取り出す意図があったとして問題視されたとみられている。

 こうした中国の動きに対し、日本をはじめとする主要国は、国内での資源開発や採掘・精錬支援、備蓄の拡充、調達先の多様化、二国間協力の強化などを進めている。そうした取り組みのひとつとして注目されるのが、多国間連携の動きだ。特に、米国主導で進められている取り組みは、調達網の多様化にとどまらず、重要鉱物市場の構造を変えようとするもので、実現すれば日本企業への影響も大きくなると見込まれる。

中国優位の理由は「埋蔵量」ではない

 トランプ政権が仕掛けた中国に対する追加関税は、中国によるレアアース等の重要鉱物の輸出管理強化という反撃にあい、その引き下げ・撤回につながった。米国にとり、軍事上も不可欠な重要鉱物の調達における対中依存の構造を変えることは喫緊の課題だ。米国は、重要鉱物市場では市場歪曲的な慣行によって過剰供給と価格低下が生じ、米国等の企業が事業からの撤退に追い込まれた結果、中国への依存が進んだと分析している。

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