中国の環境保護活動家によって撮影された「告発動画」
どこまでも続く大空と地平線を望む農場は、夏の北海道と相違ないほど美しい。ちょうど収穫期を迎えたのだろう。丸々と育った白菜が、労働者たちによって次々と大型トラックに詰め込まれていく。
一見すれば、ごくありふれた収穫風景を写したにすぎないが、問題はここからだ。白菜がトラックの荷台に載せられる直前、不可思議な光景をカメラは捉えていた。ある男が、手にした白菜を根元から正体不明の液体に浸していたのだ。
しかも一つ一つ丁寧に――。はたして、この液体は何なのか。
中国北部の河北省・張家口市の農場を舞台に、現地の環境保護活動家の男性によって撮影された「告発動画」は、あっという間に国内外へと拡散した。その理由は、白菜を浸した液体に、発がん性が指摘される有害物質「ホルムアルデヒド」が含まれていたからだ。
この有害物質を含む水溶液は「ホルマリン」と呼ばれる。防腐作用があるため遺体や生物標本の保存などに用いられることはあっても、「食用」に使われることなどあり得ない。
外報部デスクが言う。
「告発者の中国人活動家は、6月に手がかりを得て、7月に市場で売られていた白菜からホルムアルデヒドの検出を確認。産地を突き止めた上、とうとう現場へ踏み込んだ執念の告発動画でした」
さすがの中国当局も、この動画拡散の影響を無視することはできなかった。動画の内容がすべて事実だと認めた地元政府は、先月31日に白菜を液体に浸した業者の男3名を、食品安全法規などに違反したとして拘束。当局の追及に彼らは「白菜の鮮度を数日保つため薬品を使った」と罪を認めたのである。
中国政府の“御用メディア”である『人民日報』は、容疑者たちを〈消費者の命や健康を完全に無視〉と糾弾した上で、「当局はホルムアルデヒド白菜の流通を完全に阻止する」と報じた。
かようにも国をあげて火消しに躍起なのにはワケがある。中国にとって白菜は、世界最大の生産量を誇る重要な輸出品なのだ。
自社商品に「中国産」の白菜を使っているか否かさえ、回答を拒む企業も
実際、国民食であるキムチの原材料として、中国から大量に白菜を輸入する韓国は大混乱に陥る。韓国政府は「現時点では、検査時に輸入白菜からホルムアルデヒドは検出されていない」と発表するのが精一杯。
隣国に負けず劣らず中国産野菜を輸入する我が国はといえば、鈴木憲和農水相が「厚労省と連携して必要な情報を収集する」と述べるにとどまっていた。
そこで本誌が厚労省の担当部局に尋ねてみると、
「中国から輸入された白菜は、検疫所で必要に応じて検査を実施します」
あくまで輸入量が多いので“全てを検査するわけではない”との但し書きがつくありさまで、「食の安全」を担うべき大臣や省庁にしては心もとない回答なのである。
はたして日本の食卓は大丈夫なのか。実際、スーパーの店頭やネットショッピングなどを見て回ると、「中国産白菜」が原材料に使われていると思しき様々な商品が流通している。
そこで本誌は、白菜が使われることの多いキムチや中華料理などを製造販売するメーカーに一斉取材を敢行。渦中の「中国産白菜」を原材料として使用しているか否かを調査した。
詳細については表を参照していただきたいが、対象としたのはパッケージなどに明記された原料原産地表示から、原材料の白菜が「中国産」であることが明白、または表記がないため「原産国不明」の商品。「ホルムアルデヒド白菜」が混入していないかどうか、各メーカーに実態を質した。