<span>「効率化」「合理化」がもたらす人生の疎外――AIの限界を見極める極地からの眼差し</span>
写真:Jane Rix/shutterstock.com

特集|社会|カルチャー

Vol. 2

「効率化」「合理化」がもたらす人生の疎外――AIの限界を見極める極地からの眼差し

2026年9月25日

AI技術の飛躍的な発展は我々の生活や仕事の合理化や効率化に一役買っていると言えるだろう。だがそこで失われているものはないだろうか。AIの膨大な知識がもたらす安心安全便利――これらは時に我々から生の実感を奪ってしまうのではないかと極地旅行家の角幡唯介氏は指摘する。角幡氏の考える「AIの限界」とは。

極地旅行家はChatGPTをどう使うのか

 実はつい最近、私もChatGPTを使い始めました。この前、山の中で服部文祥さんと話した際に「AIと雑談している」と聞いて、どんなものかと試しに使ってみたのです。

 将来的に北海道への移住計画を立てているので、不動産登記の手続きや農地の取得方法を聞いてみたり、一人で家を建てる方法といったGoogle検索するには時間がかかることを相談してみたり、検索ツールとして便利だなと感心しています。最近では北極探検のベースであるグリーンランド北西部の人とのやり取りの翻訳にも使っています。独特の方言でGoogle翻訳でも対応できなかったので助かってます。

 ChatGPTを使い始めたときに相談したのが「ヒグマの皮のなめし方」。熊皮のなめし方は本で調べてもなかなか出てきません。なので、今年の春にヒグマ皮のなめしに挑戦した時には、とりあえず本に書いてあった鹿の皮に施されるやり方を応用してみました。しかし脂を落とすのが不十分で、できあがった革からは酷い臭いがして全く使い物にならなかった。この原因を聞いてみました。

 やり方を説明してみると、ChatGPTは「それはアルデヒド系の物質のせいではないか」と言います。どうやら、熊の脂に残っていた不飽和脂肪酸が酸化し、揮発性のアルデヒドやケトン、脂肪酸などが臭いを発しているのではないかというのがチャッピー説です。なめしの化学的なプロセスから質問をはじめて、自分の手順を説明していくうちに、そのやり方はネット上の論文にもないと向こうも興味をもちはじめ、つい話が盛り上がって気づけば半日が過ぎていました。

 北極での食生活についても聞きました。北極の旅ではシロクマやアザラシといった動物の脂を大量に摂取することになりますが、私ももう50歳で、体への影響がどうなのか心配になってシロクマの脂について聞いてみました。

 ChatGPTから返ってきた回答は食物連鎖に基づいた説明でした。北極圏に住む魚介類には体を低温から守るために融点の低い脂のオメガ3脂肪酸が多く含まれている。その魚介類を主食とするアザラシやセイウチの脂にもオメガ3脂肪酸が多い。それではアザラシを常食するシロクマはどうかというと、アザラシほどではないもののやはり豊富に含まれているそうです。この答えが本当なのかは確認がとれていませんが、ただ、オメガ3脂肪酸は血液をサラサラにして動脈硬化を防ぐと聞くので安心したのは事実です。

「思いつく」という人間の本質

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