社会

ポピュリズム、立ちんぼ、アテンション・エコノミー “貧すれば鈍する”日本社会の「不愉快な現実」

2026年9月17日


<span>ポピュリズム、立ちんぼ、アテンション・エコノミー “貧すれば鈍する”日本社会の「不愉快な現実」</span>
歌舞伎町での“商談”風景

テレビをつけてもスマホを眺めても、飛び込んでくるのは気の滅入るニュースばかり。嘆かわしい巷に目をやれば、つい「昔はよかった」などと口にしたくなるのが本音ではあるまいか。あらゆる綻びが隠し切れないほどに露呈した“日本沈没”の諸相に迫る。

旧態依然とした日本企業の構造

 世帯保有率ではテレビを超え、今や現代人の生活を“支配”しているスマートフォン。次から次へと新機軸を打ち出した商品が世に送り出されるその裏で、かつて日本の技術力を世界中に知らしめたサービスが、今年3月、ひっそりと幕を閉じたのをご存知だろうか。

 経済ジャーナリストの大西康之氏が語る。

「NTTドコモが1999年から提供を始め、今年3月に終了した〈iモード〉は、インターネットと携帯電話をつなげた世界初のテクノロジーでした。登場以来、米アップルのiPhoneが出る2007年までモバイルインターネットの主流だった。カメラ付きケータイも日本の発明で、携帯電話で撮影した写真を送信するというのは、当時極めて先端的な機能でした」

 しかし現在、そうした通信機器の世界で日本の存在感は著しく稀薄である。スマートフォンの国内シェアを見ても昨年度はおよそ50%がiPhone、次いで米グーグルのPixel、韓国が誇るサムスンのGalaxyと続く。

「ガラケーの場合、例えばドコモの規格に沿った端末を、NECやソニーが作るという構造でした。iPhoneになると、アップルは端末だけでなく、iモード的なネットサービスの仕組み、つまりiOSやアプリなどのプラットフォームまで丸ごと自前で作ってしまったのです」(同)

 これでは、端末を作ってよしとしていた日本のメーカーは太刀打ちできない。

「アップルに次いでグーグルも自前のプラットフォームを構築し、“これでスマホを作ってください”とその仕様を公開した。そしてサムスンや中国のファーウェイがそれぞれスマホを作るようになりました」(同)

 誰でも作っていいとなれば、その先は大量生産の勝負だ。しかし、

「大量生産の競争でも、日本は韓国や中国に勝てなかった。すでにコスト競争では新興国に勝てなくなっていたのです。プラットフォームもなく安価での大量生産もできない日本は、こうしてスマホの潮流から取り残されてしまったのです」(同)

 他の家電においても往時の栄光が失われつつある。

「現在、薄型テレビの国内シェアは、半分ほどが中国製あるいは中国系の製品になっています」

 そう話すのは、家電ジャーナリストの安蔵靖志氏。

「特にハイセンスという中国メーカーが、安さと性能のバランスから人気です。ハイセンスは東芝の映像機器事業も買収しています。若い世代には、中国ブランドへの抵抗がほとんどないと思います」(同)

“メイドインジャパン”の代名詞たるあの分野にも、中国メーカー進出の兆しがある。月刊誌『家電批評』編集長の阿部淳平氏が言う。

「ミラーレスカメラに関しては、キヤノンやソニーなど日本メーカーが圧倒的なシェアを持っています。が、現在〈Viltrox〉など中国本土の光学機器メーカーが、交換レンズの分野で凄まじい力をつけていて、画質において日本メーカーと変わらないレベルに達しています。近い将来、日本メーカーを脅かす存在になってもおかしくありません」

 一体、日本はどこで躓いたのだろうか。

「日本企業の旧態依然とした構造が温存され続け、労働市場の硬直化が放置されたままであることが大きな要因ではないでしょうか」

 と言うのは、作家の橘玲氏である。

「企業では〈年功序列〉と〈終身雇用〉が幅を利かせ、流動性が乏しい。さらに、世界で唯一〈ジョブ型〉ではなく〈メンバーシップ型〉雇用を採用しているのも、企業の成長にとって不利に働きます」(同)

ポピュリズムに陥った政治家たち

 ジョブ型とは、仕事に人を割り振る方式。メンバーシップ型は、人に仕事を割り振るやり方だ。

「“同じ会社だから”という理由で、それまで営業担当だった社員が、あるとき突然、経験も興味もない経理の仕事を任される。これでは個人の能力が発揮されようがありません」(同)

 心当たりのある向きも多いだろう。

「また、社会の既得権益を握っているのは戦後の経済発展を支えた団塊の世代です。彼らは自民党を中心とした政治家の大きな票田であり、政治家も票田の既得権に手は付けられなかった。結局、日本は“改革ができない国”なのです」(同)

 となると、為政者のありように目を向ける必要がある。そこで目下、存在感を発揮しているのは、いずれもポピュリストと呼ばれる政治家たちである。

 ノンフィクションライターの石戸諭氏によれば、

「参政党の神谷宗幣代表や引退した山本太郎氏などポピュリスト型の政治家は、新聞・テレビといった既存のメディアよりも、SNSやショート動画などの新しいメディアと極めて相性が良いという特徴があります」

 そういえば今年、高市早苗首相のメッセージ動画が、1億回再生という異常な数字を叩き出していた。

「これらのメディアではメッセージが短く簡潔であるほどウケがよく、主張が過激であるほど反響を得やすい。一方で、そのメッセージの下に深い思想などないことがほとんどです」(同)

 政治家の劣化を象徴する、日本のポピュリズム政治の起源について、政治アナリストの伊藤惇夫氏が解説する。

「小泉純一郎政権は大きな転換点だったと思います。“複雑な政治を単純な対立構図にして見せれば支持が集まる”という手法は、今もなお影響を与え続けている。しかし、小泉政権が何を残したかといえば、格差拡大や非正規雇用をめぐる問題など、負の側面が大きかったと思います」

 また、政治家劣化の原因はほかにもある、と伊藤氏。

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