政治

「コメ価格は下げ止まる」――元農水官僚が指摘する農協・農水省の“思惑”と“適正価格”

2026年9月29日


<span>「コメ価格は下げ止まる」――元農水官僚が指摘する農協・農水省の“思惑”と“適正価格”</span>
鈴木憲和前農水相

ようやくコメの値段が下がってきたものの、かつての水準には戻っていない。5キロ3000円を割り込んだとはいえ、2024年夏に「令和のコメ騒動」が起きる以前は5キロ2000円程度だった。まだまだ高いと感じる消費者も多いだろう。だが、コメ価格のさらなる下落にブレーキをかけているのが、農協と農水省である。元農水官僚で武蔵野大学国際総合研究所研究主幹の山下一仁氏に話を聞いた。

経済の原則からすれば不可解

 およそ2年ぶりの2000円台だ。農水省は9月18日、全国のスーパーで同月7~13日に販売されたコメ5キロの平均価格が2971円だったと発表した。「令和のコメ騒動」を受けた増産によって供給が拡大し、今年に入り値下がりが続いてきた結果だ。

 もっとも、山下氏は現在のコメ価格を「適正ではない」と見ている。

「本来の需給バランスを考えれば、小売価格は5キロ1500円程度になっていてもおかしくありません。25年産米は大幅な供給増となっており、政府の備蓄米とは別に民間が保有する在庫の総量も、直近では14年産と並ぶ最高レベルに達しているからです。にもかかわらず、今になってやっと5キロ3000円を下回ったに過ぎない。経済の原則からすれば、不可解なことが起きていると言えるでしょう」

 依然として“高値”のコメ。実際、小売価格は25年産米が市場に出回り始めた25年9月以降も、今春まで5キロ4000円前後の高水準で推移していた。つまり、供給が増えたと分かっていながら、値段がなかなか下がらなかったわけだ。

「その原因は農協と農水省です。両者が手を組み、コメの価格を高く維持してきたのです。農協は25年産米をあえて多く抱え、市場に出す量を減らしてきました。いずれ政府が、民間に売り渡した備蓄米を買い戻すと見込んでいたからです。コメの供給を人為的に絞って需給バランスを崩し、値段を調整してきたということです」

 まさに、農協が描いたシナリオどおりにコトは進んでいる。9月1日、鈴木憲和農水大臣(当時)は記者会見で、25年に放出した備蓄米21万トンについて、同月中に買い戻しの手続きを進めると発表した。表向きの目的は、食料安全保障の観点から「令和のコメ騒動」で減少した備蓄量を回復させることだというが、

「本当の理由は、農協の救済だと思います。まず前提として、農協は農家から委託を受けてコメを販売します。最終的な販売価格は翌年秋にならないと分かりませんが、農協はこの金額を予測して、集荷の際に概算金という仮払金を農家に払います。こうした仕組みの中で、農協は『令和のコメ騒動』を受け、他業者との集荷競争に負けないために、高い概算金を払う必要がありました。その後、販売価格が下がれば、農協は農家に支払った概算金の一部を、払い戻してほしいと要求することになります。しかし、農協からすると、農家はきっと抵抗してくるはずで、できるかぎり要求したくなかった。結果、在庫を増やして流通量を絞り、計画的に高い小売価格を実現させたのです。もちろん、在庫を抱えるためにはコストがかかりますが、政府が備蓄米を買い戻してくれることで、農協の在庫は消滅します」

 要するに、農協からすれば、高い概算金を支払ったことで生じるリスクを、政府による備蓄米の買い戻しによって解消できるのだ。

落ち着く先は5キロ2700円

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