経済の原則からすれば不可解
およそ2年ぶりの2000円台だ。農水省は9月18日、全国のスーパーで同月7~13日に販売されたコメ5キロの平均価格が2971円だったと発表した。「令和のコメ騒動」を受けた増産によって供給が拡大し、今年に入り値下がりが続いてきた結果だ。
もっとも、山下氏は現在のコメ価格を「適正ではない」と見ている。
「本来の需給バランスを考えれば、小売価格は5キロ1500円程度になっていてもおかしくありません。25年産米は大幅な供給増となっており、政府の備蓄米とは別に民間が保有する在庫の総量も、直近では14年産と並ぶ最高レベルに達しているからです。にもかかわらず、今になってやっと5キロ3000円を下回ったに過ぎない。経済の原則からすれば、不可解なことが起きていると言えるでしょう」
依然として“高値”のコメ。実際、小売価格は25年産米が市場に出回り始めた25年9月以降も、今春まで5キロ4000円前後の高水準で推移していた。つまり、供給が増えたと分かっていながら、値段がなかなか下がらなかったわけだ。
「その原因は農協と農水省です。両者が手を組み、コメの価格を高く維持してきたのです。農協は25年産米をあえて多く抱え、市場に出す量を減らしてきました。いずれ政府が、民間に売り渡した備蓄米を買い戻すと見込んでいたからです。コメの供給を人為的に絞って需給バランスを崩し、値段を調整してきたということです」
まさに、農協が描いたシナリオどおりにコトは進んでいる。9月1日、鈴木憲和農水大臣(当時)は記者会見で、25年に放出した備蓄米21万トンについて、同月中に買い戻しの手続きを進めると発表した。表向きの目的は、食料安全保障の観点から「令和のコメ騒動」で減少した備蓄量を回復させることだというが、
「本当の理由は、農協の救済だと思います。まず前提として、農協は農家から委託を受けてコメを販売します。最終的な販売価格は翌年秋にならないと分かりませんが、農協はこの金額を予測して、集荷の際に概算金という仮払金を農家に払います。こうした仕組みの中で、農協は『令和のコメ騒動』を受け、他業者との集荷競争に負けないために、高い概算金を払う必要がありました。その後、販売価格が下がれば、農協は農家に支払った概算金の一部を、払い戻してほしいと要求することになります。しかし、農協からすると、農家はきっと抵抗してくるはずで、できるかぎり要求したくなかった。結果、在庫を増やして流通量を絞り、計画的に高い小売価格を実現させたのです。もちろん、在庫を抱えるためにはコストがかかりますが、政府が備蓄米を買い戻してくれることで、農協の在庫は消滅します」
要するに、農協からすれば、高い概算金を支払ったことで生じるリスクを、政府による備蓄米の買い戻しによって解消できるのだ。