はっきりと分かれたサッカーファンの反応
報道の中身は、FIFA(国際サッカー連盟)が、ワールドカップをはじめとする主催大会の商業部門を「FIFA Forward Enterprise(FFE)」という子会社へ移し、FIFAが経営権を維持したまま、新会社の最大20%を外部投資家に開放して出資を受けようとしている、というもの。結果として、この計画はFIFA加盟協会から異論が噴出したこともあり、わずか数日で撤回されることになる。
この時、特に強く拒絶反応を示したのが、FIFA主催大会への不参加を表明したUEFA(欧州サッカー連盟)だった。FIFAが計画を取り下げた翌日には、「フットボールは売り物ではない」とのメッセージを打ち出し、この文言が世界中のメディアの見出しになった。
北中米ワールドカップで見られたさまざまな“変化”も相まって、改革を推し進めるFIFA会長ジャンニ・インファンティーノには、「W杯を売る男」というイメージがついてしまった。
しかし、インファンティーノは、本当にワールドカップを売ろうとしたのだろうか――。その真意を知るためには、ヨーロッパとアメリカ、二つの巨大スポーツ市場の流儀の違いを知る必要がある。
大づかみに言えば、ヨーロッパでは長い歴史の中で培われた競技やクラブの文化を土台にビジネスが発展してきた。一方、アメリカでは、競技を一つのエンターテインメント商品として捉え、ルールや時間、観戦体験までをわかりやすく設計し、その価値を収益につなげるスポーツビジネスが発達してきた。
“フットボール”が出会ったアメリカ式合理性
FIFAにとって、アメリカは特別な市場だ。
すでにスポーツをマネタイズする方法論が確立し、実践されていながら、そのサッカー市場にはまだ大きな成長の余地が残されている。
UEFAが騒動への批判の急先鋒に立ったことからも明らかなように、折り合いの悪いヨーロッパ市場への依存度を下げ、FIFAのビジネスを広げるうえで、アメリカは重要なパートナーになり得るのだ。
こうした背景を踏まえると、インファンティーノが昨年12月にドナルド・トランプ大統領へFIFA平和賞を贈り、本大会では退場処分を受けたフォラリン・バログンを巡ってトランプから直接電話を受けるなど、“特別対応”したのは、単なる個人的な交誼や尊敬だけが理由ではないのかもしれない。
そして、インファンティーノがFFEを構想し、ワールドカップの収益をFIFAの主導権のもとで最大化し、有効活用、循環させる仕組みをつくるに至った理由までもが透けて見えてくる。
“二つの価値観”が正面からぶつかったのが、前回アメリカで行われた1994年のワールドカップだった。