AIが提供するケアプランの功罪
施設介護、在宅介護にかかわらず、全ての介護サービスは、利用者の生活課題・目標・支援内容を盛り込んだ「介護サービス計画(ケアプラン)」を起点として提供される。ケアマネジャーや介護施設職員が作成したケアプランは、面接やモニタリングを通して3カ月・6カ月など定期的に見直され、利用者の実態が反映される。
現在、介護の現場のDXは、AIによるケアプラン作成支援を中心に進んでいる。
病気や要介護度など利用者のデータを入力すると、AIがパターンに応じてケアプランの「虎の巻」をつくってくれる。これを叩き台にすれば、1時間かかっていたケアプラン作成が30分でできるといった具合に、介護現場の業務負担を大幅に削減できる。
ただし、AIによるケアプラン作成はまだ発展途上であり、その使用には一定のリスクが伴うと、ケアマネジャーとしての実務経験も持つ淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博氏は指摘する。
「AIがつくったケアプランは、必ず実態に合わせて修正しなければなりません。5年、10年といった介護経験があれば、利用者の状態を把握して適切にギャップを埋める修正能力が備わっているでしょう。一方、介護業界に多い経験3年未満の未熟な人材が、AI頼みで作成したケアプランを安易に使ってしまうと、利用者の実態と計画に大きな乖離を生じさせ、逆効果を招きかねません」
介護業界は、情報技術(ICT)への投資が最も遅れている業界の1つだ。多くの事業所で、いまだに紙やFAXをベースとした業務が横行している。介護従事者の年齢は50歳代が中心で、60歳以上も多く、最新のICTやAIを取り入れにくい。さらに資金不足、人材不足にあえぎ、ICTへ投資する余裕がない事業者も多い。
その結果、介護領域ではケアプランをはじめとした過去の情報がデジタルデータとして蓄積されておらず、精度の高いAIツールを開発すること自体が難しくなっているのだ。
「今後、AIを活用する人間側の能力とAI側の精度がともに向上し、介護現場の負担軽減が進むことに期待はしています。ケアプラン作成にしても、ベテランの介護従事者の豊富な経験をAIに反映できれば、精度はぐっと上がるでしょう。しかし現状では、AIツールを手放しで受け入れることは危険です」