<span>誰が子どものトラブルの責任を負えるのか――日本がSNSの一律年齢制限に慎重な理由</span>
写真:Koshiro K/shutterstock.com

世界各国で子どものSNS利用を制限する動きが高まっている。オーストラリアでは昨年12月に16歳未満のSNS利用を事実上禁じ、EUでも13歳未満の一律禁止が検討されている。年齢による一律制限という解決策が示される一方、これは言うまでもなく子どもの知る権利や表現の自由を侵害しかねない諸刃の剣だ。こども家庭庁のWGで座長を務める曽我部真裕教授が、世界各国の規制の成否を検証しながら、来年の法改正を見据えた日本のSNS規制の針路を論じる。

世界的な「SNS年齢制限」の波

 2025年12月、オーストラリアで16歳未満のSNS利用を事実上禁止する改正オンライン安全法が施行され、対象事業者に最大約4950万豪ドルの制裁金を科す強力な規制が始動し、追随する国が相次いだ。

 こうした動きに影響を与え、あるいは後押しするものとして、本サイトでもインタビューが掲載された社会心理学者のジョナサン・ハイトの著作『不安の世代』(西川由紀子訳、草思社、2026年)がある。直近では、今年9月に、EUのフォンデアライエン委員長は、13歳未満のSNS利用を禁止するほか、15歳未満は個人用アカウントを持てないようにする規制を検討すると表明した。

 しかし、各国の政策は、年齢による一律禁止の方向に一方的に流れているわけではない。オーストラリアの法改正の前のものではあるが、英国のオンラインセーフティ法は一律禁止を採らず、事業者にリスク評価や有害コンテンツへの接触を防止する技術的措置を求める。EUのデジタルサービス法(DSA)も年齢に応じたデフォルト設定やアルゴリズムのリスクへの対応を要請する。米国では子どもを自死で亡くすなどした親や各州司法長官がプラットフォームの設計責任を問う損害賠償訴訟を提起する例が相次いでいたが、今年8月にはメタとの間で大型の和解が成立し、今後、安全対策が強化されることになる。

 一律禁止の流れにくぎを刺す直近の動きとして、フランスでは今年7月に15歳未満の利用禁止法案が可決されたものの、同年8月に憲法院(憲法裁判所)によって違憲と判示された(詳しくは田中美里「子どもの SNS利用禁止をめぐるフランスの挑戦と失敗」法学館憲法研究所ウェブサイト〔2026年9月18日〕)。憲法院は、機能やリスクを問わず広く一般的に禁止したことや、親権者による個別的な評価を排除した点について「表現・通信の自由に比例的でない侵害を与える」とした。

 また、それに先立ち、2021年の国連子どもの権利委員会一般的意見25号も、子どもを保護の対象だけでなく権利行使の主体と位置づけ、安全確保の措置が情報へのアクセスや表現の自由その他の権利を不当に制約しないことを求めており、一律禁止には慎重な立場だと理解できる。一律禁止は簡便に見えるが、子どもから学びや自己表現、他者との交流の場を奪う重大な副作用を伴う。

 日本でもこの問題に関する議論が進んでいる。2024年11月、こども家庭庁に「インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関するワーキンググループ」が設置されて翌年8月に「課題と論点の整理」を公表したのち、今年1月には同庁に「青少年インターネット環境整備法の在り方等に関する検討ワーキンググループ」が設置され、7月には中間整理報告書が取りまとめられた。

本稿では、日本のSNS規制が向かうべき方向性を論じたい。なお、筆者は上記2つのワーキンググループの座長をつとめたが、本稿はいうまでもなく筆者の私見を示すものである。

SNS利用が子どもに与える影響

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