経済・ビジネス

「現金か不動産か」「生前贈与はどうする」最新税制改正から親子で学ぶ“相続税”の基礎知識

2026年10月2日


<span>「現金か不動産か」「生前贈与はどうする」最新税制改正から親子で学ぶ“相続税”の基礎知識</span>
Alf Ribeiro / shutterstock.com

ひと昔前、「相続税」といえばもっぱら富裕層の悩みの種でしかなかった。ところがその後、法改正を経て課税対象の“すそ野”が広がり、現在では多くの人が納付の当事者となっている。これに伴い「節税」もまた、身近なものとして定着した。きたるべき人生のエンディングに備え、配偶者や子どもへ資産をスムーズに移行するにはどうすればよいのか。そしてまた、残される者たちにはいかなる心構えが求められるのだろうか。最新の税制改正を見据えながら、疑問を解いていく。

もとは日露戦争の戦費調達のために導入された相続税

 相続税など他人事のはずだった“市井の人々”が、資産家とともに納税の矢面に立たされたのは、2015年1月の相続から適用された改正相続税法がきっかけだった。従来の「5000万円+1000万円×相続人数」という基礎控除額が、「3000万円+600万円×相続人数」へと大きく引き下げられたのである。

 実際に、納税者は増加している。相続税に詳しい長谷川裕雅弁護士が言う。

「国税庁の統計では、適用の前年である14年分の課税割合は4.4%でしたが、翌年には8.0%に上昇しています。それから9年後の24年分では10.4%に達しました。不動産価格などが全国で異なることもあり、東京都内は都道府県別で最高の20.0%にのぼっています」

 都市部の中間層にとっては、すでに身近な税となっているわけだ。

 厚生労働省が発表した25年の日本人の平均寿命は、女性が87.33歳、男性は81.35歳である。一方で「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる」健康寿命は、22年時点でそれぞれ75.45歳と72.57歳。とすれば、煩雑な相続への準備は早いに越したことはなく、それには被相続人たる親世代のみならず、資産を引き継ぐ子ども世代の協力も欠かせまい。親が老い始める前に、子どもには知識や資産状況について把握しておくことが求められるのだ。

 民法では「法定相続人」について定められており、配偶者は常に相続人となる。他の親族には「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」と順位がつけられている。上位の相続人がいる場合、下位の親族は相続できない。これとは別に、兄弟姉妹を除く相続人には「遺留分」が認められており、それぞれ原則、法定相続分の2分の1。遺言書などの内容に影響されない、最低限の取り分として保証されているのだ。

 その相続に先立って、広く用いられてきたのが「生前贈与」である。そもそも贈与税は、相続税とは不可分の関係にあるといえる。

「両者を比べると、贈与税の方が一般的には重く設定されています」

 とは、前出の長谷川弁護士。

「これは相続税の課税回避を防ぐという観点からです。亡くなる直前に課税逃れを狙って財産移転をする人が現れた場合でも、相続税よりも高率な贈与税を課すことによって不公平感を解消するためです。日本では日露戦争の際、戦費調達のために相続税が導入されました。贈与税はこの相続税を補完する形で導入されたのです」

 それでも巷では、生前贈与はポピュラーな「節税対策」として重用されてきた。手法としては「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」に大別され、併用は不可。前者は一人あたり年間110万円まで非課税とされている。また後者は60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する際、累計2500万円まで非課税となり、相続税は相続財産と合算して納める。不動産や有価証券などは贈与時の評価額で課税されるため、相続時に上昇していれば節税効果が見込める。

 相続実務士で「夢相続」代表の曽根惠子氏が言う。

「23年度の税制改正大綱によって、24年1月以降は、2500万円の非課税枠とは別に毎年110万円まで基礎控除され、初年度に相続時精算課税制度の手続きをしておけば、非課税枠の贈与は申告も不要になりました。さらに、その分は相続財産に加算されることもない。この制度は手続きの煩わしさが欠点でしたが、『暦年贈与』と同じく使い勝手がよくなりました」

 その一方、これまで比較的手軽に行なわれてきた「暦年贈与」は、徐々に“締め付け”が厳しくなっている。もともと相続開始前3年以内の贈与分については、遡って相続財産に加算(持ち戻し)されてきた。これは死期が近い被相続人の“駆け込み贈与”を防ぐといった観点からなのだが、24年1月には、この持ち戻し期間が「7年以内」に変更されている。

「実際には、来年1月1日以降に始まる相続から影響が出始め、完全に『7年以内』となるのは31年1月以降です。それでも、この措置の影響は大きいといえます。子や孫に贈与を始めるタイミングは一般的にはリタイア後、相続を考え始める70代が多いのですが、この改正を踏まえ、手遅れにならないよう60代から準備をしておくことが重要だと思います」(同)

国税庁はが引き合いに出した2022年の「8億節税」ケース

 こうした政府の「駆け込み節税防止」の方針は徹底している。実は来年1月1日から、不動産取得についても厳格なルールが適用されるのだ――。

 これまで相続税は、不動産所有者を“優遇”してきたと指摘するのは、先の長谷川弁護士である。

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