中古の高級物件ほど価格がガクンと…
都内港区の麻布十番駅から徒歩約5分。近隣に各国の大使館が建ち並ぶ瀟洒な一画に、総戸数1000を超える高級マンション群がそびえ立つ。竣工は2025年春。当時の分譲価格は、約100平方メートルの部屋で3~4億円というのが相場だった。
近隣の不動産業者が言うには、
「目玉物件として話題を集めましたが、今年に入ってから価格は下がる一方です。売りに出されている10を超える部屋のうち、年初に5億円台を付けたもの(約120平方メートルタイプ)が、いまは4億5000万円を切るケースも。港区では最近、中古の高級物件ほど価格がガクンと落ちる傾向にあり、同業者の間で“なぜだろう?”と話題になっています」
不動産調査会社「東京カンテイ」が先ごろ発表した、今年8月の中古マンションの売り出し平均価格(ファミリー向けの70平方メートル換算)が話題を呼んでいる。
24年4月の平均価格は6376万円。それ以来、上昇を続けていた東京都で初めて、前月比マイナス0.2%(1億1274万円)となったのだ。とはいえ、1億円を超える異様な状況は変わらず、庶民が東京で中古マンションを買うハードルは依然高いままとなっている。
“太客”だった中国人が消失
その理由について、同社の上席主任研究員・高橋雅之氏はこう話す。
「ここ1~2年、中国人をはじめとした外国人の旺盛な需要を当て込んで、国内外の投資家や富裕層が先んじて優良物件を仕入れていました。さらに彼らの間で物件がキャッチボールのように高値で売買され、中古マンションの価格がどんどん吊り上がる構図になっていたのです」
ところが、昨年11月の高市早苗首相の台湾有事発言を機に、まずは中国本土からの買い注文がパタリと止んだという。
「最大の“太客”だった中国人という買い手が消え、皆が一斉に仕入れを手控えるようになった。加えて、価格高騰で本当に欲しい実需層(日本人購入希望者)の予算レンジからも大きく乖離することになり、物件在庫が膨らむ一方となっているのです。現在は、これまで投機・投資マネーが流れ込んでいた都心部を中心としたエリアで過熱感の揺り戻しが起きていると見ています」(同)
本土だけでなく、日本に住む中国人も購入したマンションを次々と手放していると明かすのは、在日中国人経営者である。
「昨年10月、日本で事業を営む際に必要な在留資格『経営・管理』ビザの許可基準が厳格化されたことがきっかけです。資本金が500万から3000万円に引き上げられ、事業実態にもチェックが入るようになった。これまで500万円を払えばペーパーカンパニーを作って好き放題やれたのに、それができなくなり、多くの中国人が都心のマンションを売り払って中国に帰国しています」
「新築」や「戸建て」でも価格が反転
東日本不動産流通機構の最新のレポート(今年8月度)によれば、東京都区部の中古マンションの成約件数は8カ月連続でマイナスに。なかでも、中国人などが多く住む都心3区(千代田区、中央区、港区)の減少幅は他の区より大きく、8月には前年比38.9%もの落ち込みを記録した。
他方、首都圏の8月の平均価格を見ると、東京を除き、いずれも前月比プラスとなった一方で、神奈川県4400万円、埼玉県3329万円、千葉県3058万円と割安感が際立つ(東京カンテイ調べ)。埼玉と千葉県では成約件数が8月にプラスへ転じたとの報告もある。
住宅コンサルタントの寺岡孝氏が言う。
「1億1274万円という平均価格は一般のエンドユーザーには現実味のない数字となっています。どうしても東京に中古マンションが欲しい人は、夫婦でペアローンを組むとか、単身で50年ローンを利用するのが現実。千葉や埼玉などに需要が流れるのは当然の帰結と言えます」
価格が調整局面に入り、その影響は新築マンションや戸建てにも波及している。