米国の貿易赤字、対ベトナムが最大に
米中対立を受けたサプライチェーン再編の「勝ち組」とみられてきたアジア諸国・地域が、いま米国の通商政策の新たな「標的」になろうとしている。ただし、問われるのは米国の貿易赤字の大きさだけではない。中国製品の「迂回輸出」の拠点となっているかどうかも、焦点になりそうである。
2026年1~8月の累計で、米国の財貿易赤字の相手国別首位にベトナムが躍り出た。2025年通年では中国、メキシコに次ぐ第3位であったが、今年1~8月では両国を上回っている。同期間の対ベトナム赤字は約1,639億ドルで、前年同期比約45%増となった。第2位はメキシコの約1,559億ドル、第3位は台湾の約1,477億ドルで、台湾がメキシコに迫っている。中国は約1,096億ドルで第4位となっている。
第1期トランプ政権が発足した2017年の米国の財輸入に占める国・地域別シェアをみると、中国が首位で21.6%を占めていた。これが、2026年1~8月には7.6%まで低下している。代わりにシェアを伸ばしたのが、台湾(1.8%→7.7%)、ベトナム(2.0%→7.3%)、韓国(3.0%→4.6%)、タイ(1.3%→3.8%)などのアジア諸国・地域である。2018年以降の米国による追加関税などの対中輸入規制と、それを契機に進んできた中国から東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国等への生産移転がその大きな要因とみられている。加えて近年は、AI(人工知能)関連投資の拡大に伴うサーバーなどのコンピューター類の輸入急増も寄与している。2026年1~8月の米国の「コンピューター」輸入額は前年同期からほぼ倍増しており、特に台湾やベトナムの足元のシェア上昇には、この需要増が一因となっているとみられる。
こうした貿易構造の変化のなかで、トランプ政権は、中国製品が第三国を経由して本来適用される関税や規制を回避する「迂回輸出」に警戒を強めている。国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税の下では、2025年7月31日の大統領令により、「迂回輸出」と認定された物品には相互関税率に代えて40%の追加関税を課すこととされていた。ただし、同措置を含むIEEPA関税は、米最高裁の違法判決により、2026年2月に終了している。
広がりかねない「迂回輸出」の範囲
こうしたなかで注目されるのが、米ホワイトハウス通商製造政策局が2026年8月13日に公表した報告書「大いなる積み替え詐欺(The Great Transshipment Scam)」(以下、迂回輸出報告書)である。同報告書は、2018年の対中301条関税を起点に、関税差を利用した裁定取引(tariff arbitrage)が行われた結果、中国から米国への直接輸出が第三国経由へ「再配分(Great Reallocation)」され、その一部が違法な迂回輸出のネットワークへ発展したと分析している。米国による追加関税の「関税率の高い国」が、「関税率が低い国」を経由して米国市場へのアクセスを図ることができることに加え、「関税率の低い国」も生産、加工、倉庫保管、物流の中継拠点となることで利益を得られると指摘している。そして、この迂回輸出を行う「関税率が高い国」として「歴史的に最も顕著な事例」が中国だとしている。