日本人の同調性と推しの対象を動かせる仕組み
今、人々が「推し」を必要としている背景には、大きく二つのことが言えると思います。
一つは「推し活」という言葉が社会的に許容されるようになったこと。『推し活』という言葉が広まり、周囲にも実践する人が増えたことで、以前より趣味として公言しやすくなった。
もう一つはそもそも人間には「何かに熱中したい」という欲求があることです。私は21歳くらいからアーティストのマネジメントなどに携わってきました。アーティスト側の立場からファン心理を見てきた者としても、何か熱中できるものがないと人生はシンプルにつまらないと感じる人は、とても多いです。
ただ、最近はその「熱中する対象」をファン自身が動かせる仕組みが非常に発達してきました。
AKB48の総選挙のような仕組みや、K-POPなどで見られる応援の形です。昔は大多数のファンはテレビを見たり、雑誌を買ったりするだけで、スターと直接つながることは難しかった。多くの人がCDを1枚ずつ買うことなどで「ミリオンヒット」が生まれていたのに対し、今は一人のファンがCDを何百枚も買ってチャートを動かしたり、YouTubeを何度も再生して再生数を伸ばしたりできる。ファンがアーティストの業界内での順位や活躍を左右できる仕組みが一般化されたのです。握手券やCDのバージョン違い、さまざまな特典なども含め、ファンが「自分の応援で何かを動かしている」と感じられる、そして「買わないといけない」という義務感さえ生じるビジネスがかなり成熟してきた。推しとの関係を、恋人、友達や知り合い、家族のようにファンが心理的に錯覚するような「パラソーシャル」な関係性を生み出すビジネスモデルも、業界側が率先して作ってきました。