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旧西ドイツ式の「ポリコレ」は「壁」の向こう側には通じない AfDをナチス視することで生まれる死角

2026年10月28日


<span>旧西ドイツ式の「ポリコレ」は「壁」の向こう側には通じない AfDをナチス視することで生まれる死角</span>
中道保守政党であるキリスト教民主同盟(CDU)の内部では、AfDとは協議も協力もしない原則(=「防火壁」)を維持すべきか否かで意見が割れている(ロイター)

既存政党は長らく「ドイツのための選択肢(AfD)」との協力を拒む「防火壁」を守ってきた。だが、一部の地方議会ではAfDの議員を議長に選出し、その際キリスト教民主同盟(CDU)から造反者が出たとも言われる。主流派が「壁」の死守を掲げる一方で、このままではAfDの伸張を止められないと方針転換を志向する声もある。選挙で選ばれた政党を認めることは「民主主義の危機」なのか。ドイツ政界は難問を突き付けられている。

 ドイツで今年(2026年)9月に行われたザクセン・アンハルト州など3州の州議会選挙で、右派ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進した事態を受けて、ドイツ政治はAfDに対する新たな対応に迫られている。西ドイツ以来続いてきたドイツ民主主義の姿は大きく変わるのだろうか。

「防火壁」の向こう側で燃え盛る炎

 とりわけAfDへの新たな対応を迫られているのが、大きく言えば同じ右派政治勢力に属する中道保守政党キリスト教民主同盟(CDU)である。これまでCDUは、他の既成政党も同様だが、AfDとは協議も協力もしない「防火壁」(ドイツ語でBrandmauer)の方針で対応していた。当面連立を組むことは考えられないが、政策課題によっては協議を行う方針に変化するかもしれない。この問題が大きな意味を持つのは、戦後西ドイツ以来、政治だけでなく、言論、教育あらゆる分野を支配していた、「右派的なものの徹底排除」が、相当程度無効になるかもしれないからである。

 防火壁の方針は、AfDがまだ少数勢力であるうちは有効に見えたが、各選挙で3、4割の得票率を上げるようになると、実際問題としてAfDと没交渉では、政治が動かなくなった。ベルリンの外交筋は「防火壁の向こう側が燃え盛っているが消火できない」状態と表現した。

 この問題に対する考え方は、CDU内でも大きな幅があることが今回の取材で分かった。

 9月10日に会ったベルリンのCDU系調査研究機関「新社会的市場経済へのイニシアチブ(INSM)」のシュテファン・シェーンケ経済部長(40歳)は、「これまでのAfDへの対し方は、戦略的誤りだった。やり方がずっと同じだった。その間にAfDがどんどん大きくなるのを傍観することになった。いつも同じことをやっていて、突然違う結果が出ることなどない」と述べたうえで、やり方を変えるべきだと語った。

「AfDについて語るのはやめて、AfDと語ること、AfDと同じ目線で、実務的に語るべきだ。(保守派の)歴史学者アンドレアス・レダー氏が提起したのだが、AfDをひとまとめにとらえて協力しないといった姿勢を取るのではなく、政策内容的に(これ以上は許容しないという)レッドラインを引き、どのような条件ならば協力できるかはっきりさせる。例えばプーチン(ロシア大統領)は支持しないという条件だ」

 シェーンケ部長は旧西の出身だが、旧東のCDUは自治体などでAfDと協力せざるを得ない場面が多いこともあり、総じてそれほどかたくなではない。

ベルリンでインタビューに答えるCDU系調査研究機関「INSM」のシェーンケ部長(2026年9月10日、筆者撮影)

 ザクセン・アンハルト州選挙開票日から一夜明けた7日、マクデブルク市内で地元のCDU幹部に話を聞いた。

 この幹部はCDU内にも「AfDに政権を取らせてみればいいではないか」という意見が生まれていると語った。

「旧東のいくつかの自治体の首長はAfDだが、決して成果は上がっていない。ベルリンでもAfD州議は役職を利用するいかがわしい人たちだ。AfDが実際の政治を始めれば州民は失望するだろう」

 防火壁の方針が、AfDを強化する形でしか機能していない以上、もしAfDの力をそぎたいのであれば、AfDに実際の政治を担わせて、有権者の判断を仰ぐのが最も賢明かもしれない。どの政党が担うにせよ、今のドイツの困難な状況を打開するのは極めて難しい仕事だからだ。

CDU主流派は「AfDと協力するくらいなら離党する」

 他方、AfDをまっとうな政党として認知すること自体に強い抵抗感を示すCDU党員もいる。

 マクデブルク市内で9月6日開かれたCDU「選挙パーティー」で、開票速報を見守りながら話を聞いたマティアス・シュティービヒさん(50歳)は、旧西のマールブルク出身でマクデブルクに移ってから25年になる。2009年からCDU党員で、州の「政治教育センター」次長を務める。政治教育センターは、ナチ・ドイツの反省から戦後、設置された公的機関で、民主主義意識の強化を目的に様々な啓発、教育活動を行っている。

 防火壁のやり方は失敗したのではないか、と聞くと、「ではどうすればよかったのか。民主主義者として極右とは一緒には働けない。我々はナチの歴史を持っている。旧東のCDU党員の中には、防火壁の撤去(AfDとの協力を始める)を主張する人がいるが、もしそうなれば私はCDUを離党する。AfDは決して民主主義の党ではない」と強い口調で答えた。

報道陣でごった返すマクテブルクでのCDU選挙パーティー(2026年9月6日、筆者撮影)

 ベルリンで9月9日に話を聞いた、国営企業代表のCDU党員(53歳)も、「ザクセン・アンハルト州AfDは単なる右派ポピュリストではない。多くの極右がいる。もっと早い時期にAfDの活動を禁じる『政党禁止』にすべきだった」と、AfDに対する原則的な立場の堅持を訴えた。この人も旧西の出身で、私が10年以上前に知り合った頃は、CDUの有力政治家の政策秘書をしていた。

 総じて旧西出身で、CDUの主流を歩んできた人は、AfDとは協力しないという原則的な立場の堅持を主張する。ナチ・ドイツへの贖罪を規範化し十分に内面化しないと、今のドイツのあらゆる分野のヒエラルキーで上のポストには就けない。そういう体系が確立していて、上の立場にいる人ほど「ポリティカルコレクトネス」に忠実なのが今のドイツ社会である。

 ただ、そうしたCDU主流の人の中にも、特に旧東でCDUが十分な力を持っているのかどうか疑問視する声も聞かれた。

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