教育

OECD調査が示したAIで広がる子どもの「学力格差」――家庭学習でAIをどう使うべきか

2026年11月7日


<span>OECD調査が示したAIで広がる子どもの「学力格差」――家庭学習でAIをどう使うべきか</span>
写真:BongkarnGraphic/shutterstock.com

車を使えば足腰が衰え、電卓を使えば暗算ができなくなる。それでは、「考えること」をAIに委ねたらどうか。OECDによる国際学習到達度調査(PISA)の結果は、家庭学習にAIを使用すると、その頻度だけでなく「使い方」によっても学力差が生まれることを示唆している。家庭学習でAIをどう利用するか、その差は学力ひいては思考力の根幹を分けるという。

AI教育で気を付けるべき年代は

 AI研究と言えばディープラーニングや大規模言語モデルなど技術的な部分に目が行きがちですが、実は多くのAI研究者の根源にある動機は「人を知りたい」というものです。人間はどのように学習していくのか——こうした問いの積み重ねの中から、AI技術が生まれてきました。

 人工知能の研究を進める立場としては新たな技術は歓迎するべきなのかもしれません。例えば、教員の方々がAIを活用して事務作業を効率化し、子どもたちと接する時間を増やすことは大いに推進すべきでしょう。しかし、未就学児から小学生・中学生にかけての時期、つまりは生物としての人間の脳が発達・発育しなければならない時期においては今のところAIに出番はない、というのが私の考えです。

 AIと触れ合うことで最も懸念されることは「依存」です。人間は生まれた瞬間からあらゆるものに依存して成長する生き物です。親の表情や仕草を真似ることから学びが始まるのは言わずもがなだと思います。他方でAIへの依存は生物が自然に学習し成長していく過程にネガティブに働いてしまうことがある。そこが問題の核心です。

 車を使うと足腰が衰える、電卓を使うとちょっとした計算も手計算できなくなる、パソコンで文章を書いていると漢字が書けなくなる——こうした話は誰もが思い当たるでしょう。脳は使ってこそ維持されるのであって、使わなければ弱まっていく。まったく同じ論理で、考えるという機能を人工知能に委ねてしまえば考える力が衰えていくことになります。

 会話をするためには最低限の単語を覚えていなければ話せないし、算数ができなければおつりの計算もままなりません。普段意識することはありませんが、最低限の知識と思考力がなければ日常生活を営むことさえ難しい。車や電卓と違ってAIが怖いのは、「走る」「計算する」といった機能の代替のみならず、生存する上で根幹をなす「考える」という力を奪ってしまうことにあります。

 インターネットやSNSが普及した段階で、既に「AI依存」の土壌は準備されていました。コミュニケーションツールとしてメールや掲示板が中心的だった頃にはまだ読む人間のペースで使えていましたが、「既読」機能が生まれたことで“すぐ答えなければならない”という圧力が生じました。そして、圧倒的な量の情報が次々ともたらされる中で考える余裕が失われ、条件反射的に反応することが当たり前になってしまった。批判的思考力の低下、長文の文脈理解力の低下——こうした認知能力への影響を示す研究が続々と出てきています。あらゆるITテクノロジーが私たちの思考力を弱める方向に働く、そのような土壌の上にトドメとなる生成AIが登場したと言えます。

AIで広がる「学力格差」

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