「成長促進」で餌に混ぜられる薬
スーパーの精肉コーナーには、牛のカルビや豚のロース、鶏のモモ肉などが所せましと並ぶ。幅を利かせるのは外国産ではなく、断然、国産。安全で安心のイメージが強いため、さほど悩まずに後者を買い物かごに入れていく人が多いのではなかろうか。
だが、“国産だから安全”という常識が神話並みに怪しかったとしたらどうだろう。同じ国産の食肉でもパッケージをよく見ると、「抗菌剤不使用」などと明記された商品と、そうでないものに分かれるのだ。
例えば、スーパー大手のイオン。10月下旬、都内のある店舗を覗くと、「国産若どりもも肉」が100グラム=149円で売られていた。同社のブランド鶏、「純輝鶏もも肉 青森県産」は100グラム=179円。約30円の開きがある。
理由は産地がはっきりしていてブランド鶏だから……ではない。この「純輝鶏」は、「抗生物質・合成抗菌剤の入った飼料を使用していません」と銘打たれている。つまり、飼育の過程で右の薬剤は使わなかったという“安全性”が価格に上乗せされているのだろう。
豚はどうか。「国産豚肉ロースうす切り」は100グラム=299円。同社ブランドの「宮城県産ナチュラルポークかたロースうす切りスキンパック」は100グラム=398円だった。ロースと肩ロースの違いはあるものの、後者には「抗生物質・合成抗菌剤不使用」と書かれている。
牛では、100グラム=498円と和牛のセール価格に近い水準の「タスマニアビーフももダイスカットステーキ用」が、同様に成長ホルモン剤・抗生物質不使用を謳う。
酪農の現場では抗生物質や合成抗菌剤などを「抗菌薬(剤)」と呼ぶ。これらを使っていない食肉の方が、“割高”である傾向が見て取れるのだ。
この抗菌薬について、北海道獣医師会会長で酪農学園大の名誉教授、田村豊氏が解説する。
「家畜に使用するものには、治療用の“動物用医薬品”と成長促進用の“抗菌性飼料添加物”の二つがあります」
家畜は幼少期などに呼吸器の感染症や細菌性の肺炎、腸炎を発症するケースが少なくない。その際、治療用医薬品としてテトラサイクリン系の抗生物質などを飼料や水に混ぜて投与する。
成長を促すための“抗菌性飼料添加物”は、
「餌の中に非常にわずかな量を混ぜて使います。そうすると成長を促します。家畜の腸管内の有害な菌が死んで栄養が有用なものに利用されるため、とされています」(同)
肉牛、鶏のブロイラーの“抗菌性飼料添加物”には主にモネンシンナトリウム、豚はアビラマイシン、ビコザマイシンといった抗生物質が使用される。
ここで気になるのが、抗菌剤使用の食肉を人が摂取するとどうなるのか、だ。