<span>「学年別のクラスなし」「定期テストもなし」そして「授業は生徒が先生を選ぶ」 難関大学に合格者が続々輩出、河合塾運営「ドルトン東京学園」の意外すぎる教育の中身</span>
ドルトン東京学園

 中高生時代に自身の興味を探求し続けることと、東大や早慶上智など難関大学に合格すること――。一見、相反するように思えるこの二つを両立させている学校がある。2019年に開校したドルトン東京学園中等部・高等部である。同校は米国で100年続く教育理念「ドルトンプラン」を導入している日本の中学・高校としては唯一の学校であり、2019年に設立された。いまは全校生徒600名ほどで、定期テストを行わないなど「大学受験を目的としない」と銘打つ姿勢に注目が集まっている。今年、2期生までの卒業生が出揃ったが、その合格実績には東京大学や早慶上智、MARCHなどの難関大学も含まれている。大学受験を目的としない自由な学びと難関大学への合格はどう両立しているのか。
 そして、この学校の運営は河合塾グループで、大学受験予備校という偏差値教育の本丸のような組織である。その組織がなぜ「大学受験を目的としない」学校をつくったのか。日本の従来の学校教育とは一線を画す、その教育の価値と実践を紐解くべく、安居長敏校長にインタビューを行った。そこから浮かび上がったのは「他人と比べず」「自分の頭で考える」と、口にするのは易しいが、実現するのは難しい原則を具体的な教育の形に落とし込んでいる学校の姿だった。(構成:霜田明寛)

ドルトン東京学園は「定期テストなし」

 私たちドルトン東京学園が掲げるのは「自由と協働」ですが、「自由」と聞いて、生徒たちがサボる方向に流れるのではないか、という疑問を色々な方々からよくぶつけられます。特に「管理」を徹底してきた日本の従来の教育と、「自由」は逆の概念ですから、中高生に自由を与えることに拒否感を示すような教育関係者や保護者も多いです。

 たとえば、本校では、勉強をしない生徒に対しても、ことさらに注意することはありません。もちろん、他の生徒の学びを妨げるような行為は認められません。そのかわりに、「授業は理解できている?」「課題は間に合う?」「グループワークに参加しなくても大丈夫?」といった問いかけを重ねることによって自分でそうした間違いに気づいてもらう。中学校、高校で6年間の期間があるわけで、誰しも一度くらいはサボりたくなるタイミングはあります。でも、6年間サボり続けるケースなんて見たことがない。大人になったら、自己管理するのは当たり前ですし、自分の人生に責任を取るのは自分自身です。その当たり前のことを、中学高校という早い段階からしてもらっているという感覚です。

 そもそも、本校が採用する教育メソッドのドルトンプランとは、「子どもに自由を与えればいい」というような単純な教育方法ではありません。このプランは、1920年代にアメリカの教育家のヘレン・パーカーストという人が提唱したもので、一人ひとりの知的な興味や旺盛な探究心を育て、個人の能力を最大限に引き出すことを目的とする、子どもの主体性を中心にした学習法です。私は、“子どもを学校に合わせるのではなく、学校という仕組みを子どもの生き方に合わせて組み替える”思想だと捉えています。また、約100年前に日本でいくつかの学校がドルトンプランを導入したもののうまく根付かなかったのは、その理念だけが輸入され、実際の環境を整えることができなかったからでしょう。では現在、本校ではその子どもが主体という理念を実現するために具体的にどのような仕組み・環境を整えているのか、紹介します。

 まず、大きな特徴の一つとして、定期テストがありません。ドルトンプランでは知識は詰め込まれるものではなく、自分で詰め込んでいくものという考えなんです。それに自分で覚える必要性を感じないと、覚えても役には立ちません。もちろん、知識がたくさんあることで高度な思考ができるようになるし、失敗が少なくなるということは否定しません。ただ、うちでは教科書で知識を詰め込む前に、自分で課題を立ててそれに取り組む。そうすると、必ず壁にぶつかります。そこで改めて「自分には何が足りないのか」ということに気付き、能動的に考えるようになるんです。そうした機会がないまま大人になると、ずっと他者から指示されることを待つような人間になってしまう恐れがあると考えています。自分が何を学びたいのかまだ決まっていないという段階から、とにかく“自分の頭で考える”ことを重視しています。

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