Vol. 3

医療・ウェルネス

過剰診療が疑われる「頻繁な来院」「必要以上の薬」という予兆

2026年6月2日


<span>過剰診療が疑われる「頻繁な来院」「必要以上の薬」という予兆</span>

 医師が必要以上の診療行為を行う「過剰診療」。この問題に立ち向かう二人目の医師は大阪市北区、谷口医院の谷口恭氏。総合診療医として20年以上のキャリアを持つ彼の元には、他院で不要と思われる治療や検査などを受けた患者たちが数多く相談に訪れるという。なぜ「検査も薬も最小限」という鉄則を外れる診療がこうも横行してしまうのだろうか。いくつかの事例から、過剰診療の実態とその背景を探る。

若手医師たちの医局・医師会離れが加速

 地域の病院は少子化による患者数の減少や人件費の高騰、材料費の値上げ、建物の老朽化などで出費が増え、赤字経営に転落する例が急増している。それは事実だが、過剰診療が横行している要因として、

「都市部で医局や医師会に属さない若手医師の数が増えすぎていることも大きい」

 と谷口氏は指摘する。通常、多くの病院は大学病院の「医局」から医師を派遣してもらうことで医師不足を解消し、診療体制を維持しており、医師側には医局に所属することでキャリア形成や転職先(派遣先)の確保につなげられるメリットがある。だが、近年は医局に属さず、フリーランスや公募で動く医師が増加している。自院の開業にしても、かつては開業医は所属する医局や医師会との協力が不可欠で、開業医同士の間にもそれなりのネットワークがあり、そのため医療倫理から逸脱したような行為はできなかった。ところが、

「最近では医師会に入会せず、また、医局制度の脆弱化の影響もあって医局にも所属しない若い医師が開業し、病院・クリニック専門の集客コンサルサービスを利用したり、派手な広告を打ったりして患者を集めるなど、本来の医療から逸脱しているケースがよく見られます。大学病院の総合診療科では『検査も薬も最小限』が鉄則、根拠のない検査をオーダーすれば上司から叱責されるのが当たり前ですが、大学病院の医局を経ずに最初から民間病院などでキャリアを積んだ医師の中には、そうした意識を持たない方も多いようです」

 医局から何か言われたり、地方病院などに派遣を命じられることもなく、医師会のルールにも縛られず、とにかく利益を上げることを追求する――。そんな経済合理性とQOLを第一とする若い医師が増えている現状に、谷口氏は警鐘を鳴らす。

「医師が利益を上げるために患者集めに奔走するのは、言うなれば警察官が市民を守るためでなく、ノルマ達成のために犯罪者を探し回るようなもの。そんなことは本来、絶対にあってはならないのです」

不必要な精密検査や入院、リフィル処方の拒否……横行する過剰診療の実態

 こうした状況の中、若手医師による過剰な診療行為が行われやすくなっているのだ。事実、二十数年にわたって総合診療を実践してきた谷口医院には日々、前医に不満を抱いて相談を寄せる患者が訪れる。たとえば、

「最近、よく聞くのが『ほぼ全例生検をする内視鏡医』です。上部下部消化管内視鏡(いわゆる「胃カメラ」「大腸カメラ」)を実施する場合、悪性を疑う所見があれば生検(人体の組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べること)が必要になります。まともな医療機関であれば生検にいたるのはせいぜい2~3割といったところですが、最近、ほぼ全例に対して生検を実施している医療機関が増えています。また、初診でクリニックを受診した際に大量の検査と投薬をされたというクレームもここ数年で増えています。ひどいところになると、自費の高額な検査を強いたり、サプリメントを高額で売りつけているところもあります」

 また、谷口氏は簡単にCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像法)を撮ってしまう昨今の風潮も問題視している。

「軽症の腹痛を訴える患者に対して『CTを撮れば全部わかりますよ』で済ませてしまうケースが横行しています。患者側にもそうした考えは広がっており、例えば『原因不明の頭痛に悩まされているからMRIを撮ってくれ』と言ってくる方は非常に多いですね。『どう考えてもそれ、片頭痛です』と説明してもなかなか納得してくれません」

 難しいのは、実際にMRIを撮ってみたら何かしらの問題が見つかるケースも確かにあるということだ。

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