連載 > 政治

「中傷動画」で世論操作はできるのか――ショート動画の拡散アルゴリズムから考察する

2026年6月18日


<span>「中傷動画」で世論操作はできるのか――ショート動画の拡散アルゴリズムから考察する</span>
世論へのショート動画の影響度は 写真:ROBIN WORRALL/unsplash.com

「中傷動画」に危機感を覚える野党

 昨秋の自民党総裁選や今年2月の衆院選において、高市早苗首相の陣営が、ライバル候補や他党を誹謗中傷する動画を作成し、その制作をある男性に依頼していたという週刊文春の報道が話題になっている。

 もともと文春は4月からこの問題を追及してきたが、当初はマスメディアやSNSを中心とするデジタル空間での反響は限定的だった。ところが、6月に入り、高市首相が国会答弁でこの男性について「私も秘書も知らない人である」と述べ、会議の存在自体を否定した。さらに、証拠とされる会議音声についても「違和感がある」などと述べたことで、かえって問題への注目を集めることとなった。

 加えて6月7日には、共同通信が、動画を作成していたとされる男性へのメッセージ送信先が高市首相の秘書の電話番号であることを確認したと報じた。こうした状況証拠が相次いで出てくるなかで、当初高市首相は「面識」自体を繰り返し強く否定したことから、国会で虚偽答弁をしたのではないかとの批判が強まっている。

 この問題の背景には、ネット上の誹謗中傷をめぐる政治家の問題意識の強さがある。特に野党、とりわけ中道改革連合や立憲民主党の議員がこの問題を厳しく追及している背景には、自らがネット上の誹謗中傷の直接的な被害者であるという意識がありそうだ。

 2月の衆院選で落選した岡田克也元外相(三重3区)は、敗因として「高市旋風」とともに、ネット上の「デマ」を挙げている。選挙ドットコムがこの衆院選におけるYouTube上の政党関連動画を分析したデータによれば、これらの動画のうち、中道改革連合に関するものは自民党に次いで多かった。しかも、その多くは、中道改革連合をきわめてネガティブに扱う内容だった。

 こうした動画と選挙結果との因果関係は、まだ定かではない。ただ、中道改革連合では、立憲民主党以上に若い支持層が大きく離反したことが分かっている。各社の出口調査では、前回参院選で立憲民主党に投票した層のうち、60代以上の多くは中道改革連合に投票したとされる。一方、10代から40代では、それぞれ6〜7割が自民党や国民民主党、チームみらいなど他党に流出していた。従来、立憲民主党に投票してきた層でさえ、若い世代では大半が中道改革連合から離反したことになる。

 野党側には、こうした事態の背景に、他党による戦略的な誹謗中傷があったのではないか、という疑心暗鬼すらある。もちろん、それだけで選挙結果を説明することはできない。しかし、ネット空間での評判形成が選挙に影響し得るという危機感は、野党側にかなり強く共有されているように見える。

1日100本~200本の動画で世論は動かせるのか

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する