更科食堂の味
現在の主人、白髭克彦が先代の「尚さん」こと平田尚敬から伝授されたレシピはそばだけではなかった。そばと並ぶ人気メニュー、ラーメンもまたスープの取り方から教わった。天丼、玉子丼、親子丼も百年前から続く味だ。白髭が新しくメニューに加えたのは北海道の空知産エゾシカの肉を卵とじにしたエゾシカ丼、地元で取った行者にんにくを使ったそばくらいだ。
更科食堂の店内は昭和レトロである。昔のポスターが貼られていて、食器、ガラスコップ、お盆などは昭和の時代から使っていたものだ。ラーメンのスープは鶏ガラと野菜でとったものにそばのだしを加えている。ラーメンの麺は岩見沢の老舗の製麺店から取り寄せた。更科食堂に来る客はそば、ラーメンのいずれか、もしくは両方を注文する。そして、欲張りな客はこの店だけにある天丼を頼む。天ぷらのタネは、ほうれん草だ。エビでもイカでも穴子でもない。ゴボウ、ニンジン、玉ねぎといった精進揚げでもない。ほうれん草だけを刻んだ天ぷらだ。ほうれん草の天ぷらを載せた天丼は世界で唯一無二だろう。
白髭は胸を張った。