ジェンスン・フアンは今や世界的スターだ。時価総額世界一、AI(人工知能)半導体メーカー・エヌビディアの創業者である彼は気さくな人柄で、屋台など庶民的な場所にあらわれてはビッグニュースとなる。先日、北京を訪問した際もそうだ。観光地として知られる南鑼鼓巷に姿を見せ、老北京名物の炸醤麺をすすり、発酵豆乳飲料の豆汁にも挑戦した。豆汁の独特の酸味にはさすがに顔をしかめ、その表情が中国SNSで拡散した。
だが、そうした華やかなニュースの陰で、あまり知られていない出来事がある。それが「米中トラック2外交」への参加だ。
ティム・クック主席、イーロン・マスク委員……の謎の組織
2026年5月、ドナルド・トランプ大統領は十数人の米企業トップを引き連れて中国を訪問した。一行のなかで、ひときわ目を引いたのがやはりジェンスン・フアン。彼は当初の搭乗者リストには載っていなかったが、アラスカ・アンカレジでの給油時に電撃合流し、大統領専用機エアフォースワンに乗り込んだ。北京の空港でタラップを降りたフアンの隣には、テスラのイーロン・マスクがいた。マスクのSNS投稿によると、帯同した起業家の中で専用機に同乗できたのは、この2人だけだったという。名だたる企業家の中でもこの2人が米国の看板というわけだ。
残念ながらというべきか、米中首脳会談ではマスクにも、フアンにもグッドニュースは到来しなかった。マスクは中国政府に太陽光パネル製造装置の輸出を求めているが、許可は得られていない。フアンは中国AI企業によるエヌビディア製半導体の購入再開を求めていた。以前は米国側が中国への販売を制限していたが、現在では中国政府がストップしている。中国AI企業もエヌビディアの半導体を必要としているし、エヌビディアも米国政府も売りたがっている。だが、中国政府は今も首を縦に振っていない。
失意の訪中になったかと思いきや、ほどなくして英フィナンシャル・タイムズが一つのニュースを報じた。フアンが清華大学経済管理学院の顧問委員会に加わる、と。
多くの読者にとっては聞きなれない単語だろう。だが、そのメンバーを知れば驚くはずだ。顧問委員会の主席はアップルのティム・クック。委員にはイーロン・マスク、マイクロソフトのサティア・ナデラ、メタのマーク・ザッカーバーグ、デルのマイケル・デル、JPモルガンのジェイミー・ダイモン、ブラックロックのラリー・フィンクなど、米国を代表する経営者が顔をそろえる。
この清華大学経済管理学院顧問委員会とはいったいどのような組織なのか?