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UAEとの「蜜月関係」も同床異夢、戦略的敗北に直面するイスラエル

2026年7月1日


<span>UAEとの「蜜月関係」も同床異夢、戦略的敗北に直面するイスラエル</span>
トランプ大統領はイランとの合意を優先させ、イスラエルは梯子を外された形となった(筆者撮影)

イスラエルとUAEの接近は、中東での影響力拡大を図るそれぞれの思惑が一致した結果だが、UAEにとっては独自路線の外交の危うさが一気に顕在化しつつある。イスラエルはアメリカにイランを攻撃させることに成功したものの、自国内からも「戦略的目標の達成には失敗した」との評価が出始めた。今後イランの経済復興が進めば、イスラエルは将来的な再度の軍事作戦に向けて準備を進め、さらに大胆化する可能性もある。

 2026年2月末に始まったアメリカ・イスラエルとイランの軍事衝突により、中東はパワーバランスの再編期に突入した。

 アメリカとイスラエルは改めて強固な関係にあることを示したが、アメリカでは共和党内も含め、イスラエルへの軍事支援に懐疑的な声が上がるようになり、イスラエルの将来に暗い影を落とす。

 一方、イランによる報復の舞台となった湾岸諸国は足並みが乱れている。アラブ首長国連邦(UAE)がイスラエルとの関係を強化しつつイランへの強硬姿勢を見せる一方、湾岸の盟主サウジアラビアは慎重な態度だ。従来から中立なポジションだったオマーンは、ホルムズ海峡の封鎖をめぐりイラン寄りの姿勢を取り、ドナルド・トランプ大統領による脅しの対象ともなった。カタールはイランの被害を受けながらも、アメリカとイランの停戦交渉を仲介するパキスタンをサポートし、改めて扇の要としての役割を鮮明にした。

虎の子「アイアンドーム」を供与するまでに何があったか

 この中でも、独自色が目立ったのはイスラエルとUAEだ。イスラエルは2020年、第1次トランプ政権の仲介により、対立関係にあったUAEやバーレーン、モロッコなどと国交正常化した。一連のイスラエルとアラブ諸国の融和は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教に共通する族長(信仰の祖)の名に由来して「アブラハム合意」と名付けられ、当時のトランプ政権の大きな外交的成果となった。

 アブラハム合意の最大の狙いはイラン包囲網の構築だった。2018年にアメリカが包括的核合意(JCPOA)から一方的に離脱したことにより、イランはウラン濃縮を進め、イスラエルでは危機感が高まった。アラブ諸国との国交正常化を経てイスラエルを地域に統合することで、イランに対抗する。それが2020年以降の中東政治の潮流となるかに見えた。

 2026年2月末のイスラエルとアメリカの攻撃を受け、イランはイスラエルのみならず湾岸諸国への報復攻撃に乗り出した。サウジ系メディアのまとめによると、2月末から6月初旬までにイランは湾岸諸国へ7000発以上のミサイル・ドローン攻撃を行い、そのうち2846発がUAEに向けて発射された。同国は湾岸諸国で最も多くの攻撃を受けた。

 対するUAEは、湾岸諸国の中でもイランに対し最も強硬な姿勢をとり、米メディアのウォール・ストリートジャーナルは、UAEがイランに対して軍事的な報復を実施していたとも報じた。そして今回、イスラエルが誇るミサイル迎撃システム「アイアンドーム」がUAE国内に配備されたことが明らかになった。

 イスラエルとUAEの関係は2020年の国交正常化以降、経済だけでなく軍事面も含めて深化を続けていた。例えば、2021年にはアメリカ海軍が実施した多国間軍事演習に、バーレーンとUAEがイスラエルとともに参加し、翌22年にはイスラエル製の防空システムBarakがUAEに供与された。2023年にはイスラエルとUAEが初めて二国間による海軍演習を実施する。アイアンドームの供与もそうした関係深化の延長線上にあると言える。

 アイアンドームは、共同開発国であるアメリカを除けば、これまでイスラエル以外の国に配備されたことはなかった。22年にはロシアの軍事侵攻を受けたウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が、イスラエル議会での演説でアイアンドームの供与を要請したが、イスラエルはロシアとの関係を重視し供与しなかった。

 ただし、アイアンドームの迎撃ミサイルは1発あたり約5万ドルとされ、アメリカから年間約38億ドル(うちミサイル防衛関連に5億ドル)の軍事支援を受けるイスラエルだからこそ、大量に導入できたと言える。そもそも、ドローンや短距離ロケット弾による集中攻撃にさらされる国は限られており、コスト問題を別にしても、元々アイアンドームの需要は限られていたという背景もある。

イスラエル首相府の声明を否定したUAE

 しかし、UAE側はイスラエルとの関係強化を対外的に宣伝することには慎重だ。

 アイアンドームのUAE配備は、26年4月、アメリカのメディア『Axios』が最初に報じた。5月11日には、アメリカのマイク・ウォルツ国連大使がニューヨークのイスラエル国連代表部で開かれた独立記念イベントで配備を認め、翌12日にもマイク・ハッカビー駐イスラエル米国大使がテルアビブでのイベントで、「イスラエルはUAEにアイアンドームの砲台と操作要員を送った。なぜそんなことが可能だったのか。アブラハム合意に基づく、UAEとイスラエルの並外れた関係があったからだ」と話し、アブラハム合意の成果を強調した。

 アメリカ側の積極的な発信とは対照的に、イスラエルはUAEへのアイアンドーム供与を公式に認めておらず、UAEも各種メディアに対して反応を示していない。

 さらに、イスラエルとUAEの間の温度差が露わになったのが、今年3月のベンヤミン・ネタニヤフ首相のUAE訪問だった。イスラエル首相府は5月13日、「ネタニヤフ首相は極秘にアラブ首長国連邦を訪問し、ムハンマド・ビン・ザイド大統領と会談した」と発表した。しかし、UAE政府は、その報道を即座に否定したのだ。

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