<span>OECD成人スキル調査が突きつける「知識社会」の残酷な真実</span>

 “富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる”。新約聖書のマタイ福音書のたとえ話に因み「マタイ効果」とも呼ばれる現象だ。これまで様々な研究で示されてきたこの現象だが、OECDの実施する国際成人力調査「PIAAC」の結果はさらに残酷な真実を付け加える。認知能力が高い者は生活満足度も高く、認知能力が低い者は生活満足度も低い――。これまでリベラルな社会が大前提としてきた「すべての国民に同じ認知能力がある」という幸福な幻想はいまや崩れ去りつつあるのだ。

リテラシーが高いほど生活満足度が高い

 PIAAC(OECD国際成人力調査)の前提にあるのは、知識社会においては認知的な能力(成人スキル)が経済的な結果となって表われ、それが個々の人生に影響を与えるという認識だ。このことは、テストと同時に行なわれた背景調査に明瞭に示されている。

 たとえば数的思考力では、OECD平均で、フルタイムの仕事をしている者がもっとも習熟度すなわちリテラシーが高く、次いでパートタイム、失業、労働力外の順になる傾向がはっきりしている。PIAACの習熟度は賃金にも影響しており、レベル1以下とレベル4以上の賃金格差はアメリカ、ドイツ、スイス、シンガポールなどできわだって高い。

 ここまでは、「PIAACが測っている成人スキルは仕事に役立つ認知能力なのだから、そんなのは当たり前だ」と思うかもしれない。だが読解力や数的思考力、問題解決能力のような認知的リテラシーの影響は、フルタイムかパートタイムか(あるいは失業者か)や、収入が多いか少ないかだけにとどまらない。

 コンピュータにデータを入力すると、それを演算して結果を出力する。これがインプット(入力)とアウトプット(出力)の関係だ。それに対してアウトカムは、その出力がどのような成果・効果をもたらしたかを示す。たとえば、自治体が安全対策で歩道を設置するのはアウトプット(直接の産出)で、それによって歩行者の事故が減少するのがアウトカム(インプットの成果)になる。

 PIAACは背景調査で、成人スキルの社会的アウトカムを調べている。

 生活満足度は、「総合的に考えて、最近、あなたは、自分の人生にどのくらい満足していますか」を訊ね、「0(非常に不満がある)」から「10(非常に満足している)」の11段階で評価した。

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