世論調査の「操作」という陰謀論
報道機関の世論調査で高市内閣の支持率が高いのは、数字が操作されているからだ――。最近、こうした言説がSNS上で一定の信憑性をもって受け止められ、大きく拡散したことに、筆者は衝撃を受けた。
筆者自身、調査の実務家として、かなり荒唐無稽な話だと感じたことは言うまでもない。根拠に乏しいというより、ほとんど陰謀論と呼ぶほかない次元の話だ。だが、それにもかかわらず少なくない人が「やはりマスコミの世論調査は操作されているのだ」と受け止め、陰謀論を拡散したことに、単なる「誤解」では片づけられない薄気味悪さのようなものを感じた。
とはいえ、この記事の読者の中にも「そもそも世論調査は本当にちゃんと行われているのか」「報道機関が都合よく数字を作っているのではないか」と疑っている人はいるかもしれない。そこまでは疑わずとも「同じ内閣の支持率を調べているのに、なぜ調査機関によって数字が大きく違うのか」と、調査の精度や品質に疑問を持つ向きもあるだろう。
そこで、本稿では、報道機関の世論調査で示された高市内閣の支持率が「操作された数字」ではないと言える理由や、各社の数値の違いの背景にある事情を説明したい。
今回、世論調査をめぐる陰謀論が広がった直接のきっかけは、ある調査会社のシステムをめぐるSNS上の投稿だった。同社が公表している電話番号に自分から電話をかけると、ショートメッセージ(SMS)でURLが届き、そこから調査に回答できてしまうように見える、という内容である。実際に、その社の提供する画面上で回答が完了できたかのような操作ができたことから、多くの人が「報道機関の世論調査に、対象者ではない人が勝手に回答できてしまっている」と早合点した。そこに尾ひれがついて「世論調査の内閣支持率は操作されている」といった途方もない陰謀論が拡散されてしまった。