AIエージェントによる代替は止まらない
──Gensparkはホワイトカラーがこれまで担ってきた作業を丸ごと代替しうるAIエージェントを開発しています。日本でも電通、阪急阪神不動産、船井総合研究所、世田谷区といった名だたる企業や自治体が導入しており、注目度は高いです。ただ、AIへのバックラッシュ(反動)は根強く、実際に2026年5月16日号の英エコノミスト誌が「The jobs apocalypse」、つまり「雇用の黙示録」を特集テーマとして取り上げるなど、AIによる雇用の淘汰はすでに現実となっています。こうしたAIへの恐怖について、当のAI企業の経営者としてどう受け止めていますか。
ウェン・サン氏(以下サン) 資本主義をどう捉えるか、という点にその議論は帰着するのではないでしょうか。つまり、ヘンリー・フォードが20世紀初頭にT型フォードを開発し、誰もが自動車に乗ることができるようになった時も、「馬に乗ろう」と呼びかけていた人たちが存在していました。
それから100年経った今、誰もそんなことをもう主張しません。資本主義とは私が考えるに、生産性が飛躍的に向上することを指します。100年前と比べると、人類の生産性は大幅に上がりました。生産性が上がったということは、人類の欲望もより大きくなり、(そうした欲望を)実際に満たすことが可能になったことを意味します。
もっと美味しいものを食べたい。もっと短い時間で遠くまで行きたい。もっと早く、効率的に作業をしたい──。人間の欲望には際限がなく、資本主義とテクノロジーが、これを拡大し、現実のものにしていきます。
その結果として、今の人間は100年前の人類より多くのエネルギーを消費し、個性的な暮らしを送り、進歩した文明の中で生きられるようになりました。
AIによる「産業革命」も、T型フォードの開発のように、多くの人たちの生産性の向上と欲望の達成に寄与します。AIエージェントによって達成されるのは「ホワイトカラーを雑務から解放する」革命であり、この流れは止まりません。
数字をエクセルに打ち込み、プレゼンのためにパワーポイントで図解し、会議メモをSlackにコピペし、市場調査のために延々と検索を繰り返し、クタクタになって一日を終えたい、と思っていたサラリーマンがこれまでにいたのでしょうか?
実際には、こうした非人間的な雑務を機械が代替できなかったから、人間がやっていただけです。これからのホワイトカラーは、もっと創造的で、もっと戦略的で、もっと生産性の高い存在になれるはずです。
「雇用の黙示録」は人類的な課題
──AIによる仕事の生産性の向上、という論点に関しては、すでに仕事のノウハウを熟知している専門家に対しては当てはまる部分も大きいのでしょう。一方で、これから仕事をはじめる若年層はどうでしょうか。5月に米国・アリゾナ大学でGoogle元CEOのエリック・シュミット氏が卒業式のスピーチでAIについて話した時、卒業生たちからはブーイングが巻き起こりました。つまり、今の若い世代の中には、AIを「脅威」として認識している人も多い、ということです。