<span>「それ、聞いてないんだけど」かくして族議員はつくられる――自民党「政務調査会」という密室</span>
あえてカメラの前で「奇襲」した稲田朋美・元政調会長(自民党「法務部会・司法制度調査会合同会議」にて)

「聞いていない!」は国会議員の常套句だ。法改正の内容、予算・税制改正など国会に提出すべき事項について政府に物申すときに乱発する言葉でもある。その法改正が、予算措置が、制度変更が社会や業界をどのように変えるのか。情報を正確に、いち早く知って「価値」を上げれば、カネと票に結びつき、権力への道がひらいていく。自民党の中で事前情報を知ることができる場所が政務調査会だ。非公開のベールに包まれた密室のインサイドレポートを3回にわたってお届けする。

インフルエンサー化する議員たち

「政府は次期国会に改正法案を提出予定です」

 新たな法改正やルール作りの見通しは朝のニュースの特ダネとしてしばしば報道されるが、その法改正にかかわる省庁の担当部署は、身構えることになる。ニュースを追いかけるように、国会議員の事務所や時には議員本人から「今朝のNHKニュースの件、聞いてないが」「朝刊の報道は何だ」などと連絡が入るからだ。

 政治活動の評価は、その議員の持つ情報のスピードと価値によることも多く、政治家たちは「早耳」を競い合う。SNSの普及以降、そのスピード競争は激化し、インフルエンサーと化した国会議員が、写真や動画を駆使してコンテンツ作りやフォロワー獲得に励んでいる。永田町ではその“ご活躍ぶり”を撮影すべく、スマホ片手に議員に同行させられる秘書の姿が増えた。

 なぜ政治家は「事前の」情報を競うのか。新しい情報をいち早く発信することは、「私は政権の中枢に近い」「重要な政策決定に深くかかわっている」という自己アピールになるからだ。

 議員が欲しがる事前の情報収集については、自民党政務調査会(以下政調会)が長年党内ルールとして培ってきた「事前審査制」の存在なくして語れない。事前審査制は、政治学や行政学を専攻する学生の教科書に必ず記載のある政治の仕組みだが、その内情は知られていない。会議は原則として非公開。国会のように議事録の公的な作成・公開もないため、合意形成がどのように成されたのか。誰がどのような利害関係から法案や政策に反対し、あるいは修正を迫ったのか。その詳細なプロセスは闇の中だ。特定の業界や省庁と深いつながりのある「族議員」はこの密室の仕組みを利用することで存在感を発揮する。

自民党政治の核心「政調会」

 国会が予算案や法律案を審議する場であるならば、政調会はそれらが生まれる場だ。党の政策の司令塔たる組織にふさわしく、歴代政調会長には、福田赳夫、田中角栄、大平正芳、橋本龍太郎、麻生太郎……とそうそうたる名前が並び、この役職が総理への登竜門であることがわかる。高市早苗総理も安倍晋三政権時代および岸田文雄政権時代に経験済みだ。高市改造内閣でも政調会長にはコバタカこと小林鷹之が再任され、来年の総裁選での続投を狙う高市総理が、ライバル候補の出馬を阻止するための囲い込みだ、とも言われている。

 毎年、内閣は閣議決定した60~100本近い政府提出法案を国会に提出するが、国会提出に先立ち、与党である自民党の了承を取り付ける必要がある。いわゆる「事前審査制」と呼ばれる手続きだ。法律で決められたものではなく、長年の「慣習」として続いてきたこの仕組みは、政調会にある「部会」から始まる。部会は、「総務部会」「外交部会」「厚生労働部会」……というように各省庁の所管業務に沿った組織となっており、法案内容や条文案等を審査する。

 部会の審査を経た案は、その上部組織である「政調審議会」(政審/政調会長・政調会長代行・副会長等がメンバー)に続き、党の最高意思決定機関である「総務会」の審査を経て自民党として了承されると、晴れて閣議決定に進むのだ。与党の協力を得たい政府側からすれば、部会と政審からなる政調会は最大の関門として位置づけられている。国会提出のタイムリミットを目途に逆算して、国会開会の数カ月前から自民党との折衝を重ねる。事前審査を経た法案には党議拘束がかかり、国会での審議が円滑に進む一方、その手続きは国会形骸化の主因として批判されてきた。

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