猛烈な非難を浴びた福岡県議会
「不正のトライアングル」という概念がある。企業や組織の不正は「動機」「機会」「正当化」という三つの条件が重なった時に起きやすい、とするものだ。
ここでいう「動機」とは、組織内の地位への欲求や金銭的な窮迫など、不正へと人を駆り立てる事情である。「機会」とは、他者や外部からのチェック機能が働かず、不正をしようと思えば実行できてしまう環境を指す。「正当化」とは、「昔から皆がやってきた」「自分だけが悪いわけではない」と、自らを納得させる心の理屈である。
この概念が示す最大の教訓は、不正を個人の倫理観だけで説明しても再発は防げないということだ。例えば企業で横領事件が起きたとする。その担当者一人を処分しても、そもそも一人で支払いの決裁から振込承認までできてしまう仕組みが放置されていたとすれば、いずれ別の誰かがまた同じ不正を働くだろう。「機会」の穴が残っているからだ。不正をただ罰するのではなく、そもそも不正を働こうとしてもできない構造をつくることが、根本的な対策となる。
この教訓を今最も活かさなければならないのは、福岡県議会ではなかろうか。
福岡県議会では、今年に入って海外視察における高額な支出が常態化している実態が明らかになった。過去3年間の海外活動は23件、総額約2億6500万円に上り、ほぼ全てで宿泊費が規定上の基準額を上回っていたという。更に、その問題が追及される過程で、正副議長経験者らが就任をめぐって自民党県議団幹部に計2000万円を超える現金を渡したと証言する事態が生じた。
名指しされた側は受領を否定しており、第三者による客観的な調査が求められたが、議長は「時間がかかる」などとして日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会の設置に消極的な態度を示していた。その後、批判の拡大を受けて設置へ方針転換したが、問題発覚からかなりの時間を要している。
他にも、県の課長級以上でつくる「部課長会」が、職員の同意を得ないまま給与から天引きした会費で、正副議長らの政治資金パーティ券を繰り返し購入していた問題も明らかになった。こうして「政治とカネ」の問題が四方八方で噴出する渦中にあって、しかも熊本地震当日の夜に、自民党県議団の当時の会長が自らの政治資金パーティを敢行し、記者団に「正直、やってよかった」とまで強弁した。福岡のみならず全国から猛烈な批判を招き、会長は辞任を余儀なくされた。