よかれと思った「商品券」
――今回は、2025年3月以降のことを中心に伺います。いきなりまた悪い話からになって恐縮ですが、3月に入ってすぐに「商品券配布問題」が起きます。新人議員慰労の食事会に先立って、出席者たちに10万円の商品券を配ったというものです。これがかなりの反発を招きました。政治とカネが問題視されているなか、無神経だ、といったことです。
当時の会見での石破総理の説明は大雑把に言えば、こういうことでした。
「新人議員が何かと物入りなのはよく知っている。本人やそのご家族の皆さんへのねぎらいの気持ちがあった。それが石破らしくないという批判を招いたことについては、真摯に反省している」
この説明の通り、ということでいいのですか。ポケットマネーから出したということですが、本当でしょうか。
当時の説明に嘘はありません。感覚がずれている、と言われれば申し訳ないとしか言いようがないのですが、もう少し丁寧にお話しすればこういうことです。
私が初当選したのは昭和61年。各議員には党からワシントン靴店の商品券と、たしか銀座のテーラーのお仕立券30万円が渡されました。すごくありがたかったのをよく覚えています。
サラリーマンだった私は銀座のテーラーで背広を作ったことなどありませんでした。お店に行って「10万円を3着という風にできませんか」と聞いて、「できません」と答えられたものです。
こういうことが日常だった時代を経験していました。よほどの資産家である方を除けば、国会議員のほとんどは多かれ少なかれお金のことでは苦労をしているでしょう。秘書へのボーナスをどうしよう、事務所の家賃はどうしよう。そういう悩みはつきませんよ。
――だから喜ばれると思った?
議員になるとある程度見栄えもきちんとしなければならないし、その役に立てば、と。あるいはこれで苦労したご家族に何か買ってあげるのもいいでしょう、という気持ちでした。
――しかし「政治とカネ」への注目が集まる中、不用意だったのではないでしょうか。
そういうことだったのでしょうね。これもまた、「内の論理」であって、世間で通用する話ではなかったということですね。実は事務所にお持ちした途端に、もうその話が外部に流れていた、と後で聞きました。党内の誰それが広めた、なんて噂も聞きましたね。その真偽はわかりません。
――やりなれないことをやって失敗した、とも言われていましたね。水月会(石破氏の政策グループ)でもお金を配るようなことはしていなかったんじゃないですか。
いや、領収書をいただく形では行っていたと思います。「やりなれない」かどうかは別として、やったことがまったくないわけではありませんでした。
――こういう形でお金を渡すというのは、政界の常識なのでしょうか。当時、実は民主党政権下でも同じようなことはあったと言われていました。共産党はやっていない気もしますが。
共産党はやっていないでしょうね。公明党もないと思います。
――実は石破首相ではなく、森山裕幹事長のアドバイスだったのでは、という見方もありましたが。
いえ、森山さんはそういうことを言う方ではありません。
――「ケチ」と言われるのが気になったというのは首相になってからですか。
首相になる前からそういうことは言われていたんじゃないでしょうか。ただ、なってからはそれを“大音量”で言う人がでてきたという面はあるかもしれません。
――冷静に考えると、「政治とカネ」が大問題だというのならば、「ケチは美徳」という気もしますが。
そこはすごく矛盾していますよね。でも、そういうことってよくあるのではないですか。メディアの論調においては。
――「ケチの何が悪い。清廉潔白の証拠だ」と強く出るという策はなかったのでしょうか。
繰り返しになりますが、自分が若い頃に党、あるいは派閥から支援していただいて、すごく助かったなという思いが強かったですね。だから「少しでも喜んでもらえれば」と考えた。
一般企業でも新入社員にいろいろな形で補助や支援をすることはあると思うんですが、それと同じようなものだと考えていました。