「揺り戻し」は確実に訪れる
17.59%(2026年3月末時点)の株主に過ぎない東芝が計上した株式評価・売却益が6兆3294億円――。8月7日、東芝が公表した2026年度第1四半期(4〜6月期)決算は確かに驚異的だった。
巨額の「利益」をもたらしたのは9年前に分社化した半導体メモリー大手のキオクシアホールディングス(HD)。世界的なAI(人工知能)・半導体需要の拡大を背景に年初から同社の株価が急上昇した。
2026年1月5日の大発会時点で1万1350円だったキオクシアの株価は、4月1日に日経平均株価の構成銘柄に採用されたこともあって上昇気流に乗り、6月12日に8万1200円と7倍強に値上がり。株式時価総額も年初の約6.1兆円から約44.3兆円に膨らんだ。
さらに6月22日には株価11万2700円、時価総額約61兆円に急騰。企業価値の尺度である時価総額でトヨタ自動車(約43.3兆円)やソフトバンクグループ(約41.3兆円)を20兆円近く上回る躍進に「日本を代表する企業の座が、自動車メーカーから半導体メーカーへと移った」(2026年6月24日付『ダイヤモンド・オンライン』)といったメディアの論調も目立つようになった。
だが、それから2カ月余り。“相場は水もの”と言われる通り、キオクシアの株価は乱高下を繰り返し、8月31日時点の株価は4万9990円、時価総額は約27兆円とピーク時から5割強の値下がり。自動車から半導体への「盟主交代」を唱えた論調は些か早計だったと言わざるを得ない。
というのも、半導体メーカー、中でもキオクシアのようなデータ記憶用のメモリー専業メーカーは、元々一般的な製造業に比べ収益のボラティリティー(振れ幅)が大きい。NAND型フラッシュメモリー(電源を切ってもデータが消えない不揮発性記憶媒体)やDRAM(電源を切るとデータは消えるが、読み込み書き込みが高速の揮発性記憶媒体)は数年単位で極端な好況と不況を繰り返すシリコンサイクル(需給循環)の影響を免れず、コモディティー(汎用品)の常として需給バランスの変化が製品価格を大きく左右する。