社会

マスコミ業界の廃れゆく「ファクトチェック」――信頼されるメディアの新たなカギは「接触頻度」か

2026年9月24日


<span>マスコミ業界の廃れゆく「ファクトチェック」――信頼されるメディアの新たなカギは「接触頻度」か</span>

ノンフィクションライターの石戸諭氏が『ニュースの未来』(光文社新書)を上梓したのは2021年のこと。同著の出版から5年が経ち、SNSの影響力は拡大の一途をたどり、新聞の部数は急落を続け、生成AIがジャーナリズムの現場に侵食しつつある。メディアを取り巻く環境が激変するなかでニュースの本質はどこにあるのか。あらためて石戸氏に聞いた。

5年間でメディア空間はどう変わったか

 2021年に出版した『ニュースの未来』の中では〈「良いニュース」の五大要素〉に触れました。「謎」「驚き」「批評」「個性」「思考」――つまりは、社会の「謎」に迫り、「驚き」を与えるだけでなく、そこに「批評」が宿り、簡単にまねのできない「個性」があり、さらに読んだ人にとって「思考」する時間を提供するようなもの、それこそが「良いニュース」という話です。出版から5年が経った今も、ニュースの本質的な条件という観点では、この大枠は揺らいでいないと思います。

 この本はもともと、大学での講義が起点です。2019年から2020年にかけて、ある大学の講義を担当することになって、そこで準備のために半年ほどかけてジャーナリズム関連の書籍を読み込んだ。そのとき痛感したのは、既存の新聞記者向け入門書の多くが現場を経験した人向けに書かれていて、これから始める若者には届きにくいこと。自慢話が多く、事例も古い。サツ(警察)回りの苦労話や政治部時代の武勇伝を学生に読ませても、なかなかついてこない。だったら、自分で使えるものを作るしかないと思ったのが、この本の出発点でした。

 この5年間で最も大きく変わったことを一つ挙げるとすれば、ファクトチェックへの関心が薄れたことでしょうか。フェイクニュースが問題になったとき、処方箋として掲げられたのは「正しい事実を提示すること」でした。ファクトこそが武器だという信念がメディアの世界を支配していたわけです。

 ところが実際には、ファクトを提示したからといって人の意見が変わるわけではない——この認識が、今では広く共有されるようになっています。当時から予見されていたことではありますが、それが社会的な共通認識として定着するまでには5年という時間が必要でした。ファクトチェックは大切ですが、絶対的なものでもない。これが、この5年間の最も本質的な変化だと思います。

「ファクトチェック」から「免疫」へ

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