医療・ウェルネス

頭頸部から子宮頸がん、膵がんへ 光免疫療法が迎えた「次のフェーズ」

2026年9月14日


<span>頭頸部から子宮頸がん、膵がんへ 光免疫療法が迎えた「次のフェーズ」</span>
がん細胞を狙い撃つ光免疫療法(イメージ)

がんを「光で治す」――。2020年に保険適用され、一躍注目を集めた治療法が新たな段階に入った。現在、導入する医療施設は、この5年で飛躍的に拡大。一部のがんに限った治療でなく、様々ながんへの道筋も見えてきたという。光免疫療法の“最前線”を追う。

実際の自己負担額は月あたり数万円台

「保険適用から5年が経って、ようやく次の段階に入ったように思います」

 そう話すのは、光免疫療法の開発者で、米国立衛生研究所(NIH)の主任研究員である小林久隆医師だ。

「コロナ禍で研究の進捗に影響もありましたが、治療は着実に進化しています」

 患者から見れば、「光免疫療法の広がり方は遅いのでは」と感じられた5年かもしれない。だが現場から見れば、「この治療をどこまで安全に、どこまで効かせられるか」という一丁目一番地の部分を固める時間でもあった。

 光免疫療法が、世界で初めて、日本で保険適用となったのは2020年11月。再発・難治の頭頸部がん(首から上にできる「咽頭がん」「喉頭がん」「舌がん」など)に対して保険収載された。

 頭頸部がんでは保険診療として4回まで受けられる。総額は600万円前後だが、保険が適用されることに加えて高額療養費制度が使えるため、実際の自己負担は月あたり数万円台に抑えられる。事前に「限度額適用認定証」やマイナ保険証を用意しておけば、窓口での支払いも最初から上限額の範囲内で済む。

 治療は主に外科医が担当する。当初、治療ができる施設は全国で20カ所ほどしかなかったが、今では、全国47都道府県で200ヶ所を超える規模まで広がり、現場の感触も変わった。

「最初の頃は、従来にないまったく新しいアプローチの治療だったので、臨床医師の我々も正直“おっかなびっくり”というところがありました」

 と、東京科学大学教授で日本頭頸部外科学会理事長の朝蔭孝宏医師は振り返る。

「今は医師やスタッフが経験を積んで、技術も習熟してきた。頭頸部がんにおいては、再発・転移した患者さんへの有効な治療の一つとして“使いこなせている”という感じになってきていると思います」

 インパクトのあるデータも出てきた。ウイルスが関与する「上咽頭がん」における報告では、国立がん研究センター東病院・篠崎剛医師らが、局所奏効率96%(完全寛解は84%)という数字を発表している。

 もちろんこの、ちょっと信じられないような驚異的な数字は、対象患者数が少ないことなど条件が限定的で、すべての症例に当てはまるとは言えない。それでも、「条件が整えば、ここまで腫瘍が小さくなるケースがあり得る」という、この治療法の可能性を示した結果だろう。

「これまで光免疫療法は頭頸部がんの中でも、ごく一部の患者さんにしか使えない“特殊な治療”でした」

 と小林医師は言う。実は、保険適用となった今でも、すべての頭頸部がん患者に使える治療ではなく、「切除不能な局所進行または局所再発したがん」に限られる。

 わかりやすく言えば、腫瘍が鼻のずっと奥にあって、頭蓋骨を割らなければ手術ができない場合や、すでに放射線治療や抗がん剤の効き目がないと認められた場合などだ。

「つまり、“最後の手段”という感覚で治療を受けるステージ4の患者さんがほとんどです。そうした末期の患者さんが寛解したケースもあり、次はどこまで適用範囲を広げるかという段階に入ったと感じています」(小林医師)」

近赤外線照射装置
光免疫療法の薬剤

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

注目の特集

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの電子書籍

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する