<span>定番の天むすからレッドブル、時にハーゲンダッツが縁結び――体力勝負の黒衣「国会対策委員会」の胃袋と交渉術</span>
森山裕と辻元清美は与野党の国対委員長として向き合った

国会法には定めのない組織でありながら、国会運営をお膳立てする各党の裏方集団。それが国会対策委員会(国対)だ。国会会期中は毎朝会議があり、会議が終わってもメンバーは部屋に常駐して、本会議や委員会の見込みを共有しつつ不測の事態に備える。「対話による合意形成」のプロセスを重んじ、「熟議」の環境を整える裏方たちの姿を描くインサイドレポート(全4回)の第2回をお届けする。

必修 国対ワード

 与野党協議の最前線に立つ国対(国会対策委員会)で日常的に使われる独特の「国対ワード」(業界用語)がある。本会議や委員会を開いて審議を始めることを「店開き」、それに対して審議を拒否する野党側の行動を「吊るし」という。

 与党国対「重要法案だから、早く委員会を店開きして審議を進めたい」

 野党国対「大臣の失言への謝罪が先だ。応じるまでは、法案を吊るしにさせてもらう」

 「吊るし」でドアを開けない野党に、「お土産」(妥協案)を持って説得にいくのが与党の役割だ。双方が「握る」(合意する)ことでようやく店が開くときもあれば、委員長職権(*後述)や強行採決で吊るしが無視されることもある。

 そういった与党・野党の国対委員長による協議は「ヨヤコク(与野国)」と呼ばれ、会期末など国会の緊迫した局面においては、時には24時間体制で頻繁に開催される。野党の国対委員長協議は「ヤコク」。与野党の理事が協議する会議体のことは、「ヨリコン(与理懇)」「ヤリコン(野理懇)」などと呼ばれる。

 他にも「禁足(キンソク)」と言えば、すぐに議場に駆け付けられる国会内や議員会館に留まる指示を指し、「お経読み」とは閣僚や提案者が、本会議や委員会の冒頭で法案の提案理由説明を淡々と読み上げることを指す。

 主に野党側が合法的に議事進行を妨げる戦術として、「牛歩(ギュウホ)」(本会議場での記名投票の際、牛のような歩みでゆっくり時間をかけて投票箱まで進むことで時間を引き延ばす戦術)や、内閣不信任案や委員長・閣僚等の解任決議案提出の際、趣旨説明や討論で何時間も演説を続ける「フィリバスター」などがある。過去最長のフィリバスタ―は、森ゆうこ参議院議員による2004年の「厚生労働委員長解任決議案」の趣旨説明であり、年金関連法案の採決阻止のために深夜の議場で3時間1分の演説を行った。最近でも、2024年に山井和則衆議院議員が予算案の衆議院通過を阻止するために、派閥の裏金事件に関わった議員一人ひとりの名前を挙げ、論評を行うことで2時間54分に及んだことがあった。

 国対間の協議の決裂した際の非常手段として職権で委員会を開催する「職権立て(ショッケンダテ)」がある。国会法の解釈に基づき、委員長は委員会の日程や議題を決定する最終的な権限(職権)を有する。一つの委員会で職権立てが行われると、野党側の反発から他全ての国会審議がストップする。2026年度予算の衆議院審議では、予算委員長が16回職権を発動して委員会開催を強行したことで、批判を受けた。

 採決の際、与野党のメンツを保つため「付帯決議(フタイケツギ)」という法律運用に関する留意事項、要望事項を法律案に追記することがある。修正案ではないため法的効力は生じないが、国会の総意や与野党の合意として示されるため、これも国対間の協議を中心にしばしば落としどころや「お土産」として用いられてきた合意形成の手段だ。先の国会で成立した副首都法案においても、野党の要望に沿い、付帯決議で「住民投票期間と関係自治体の地方選挙期間が重複しないよう最大限調整する」との文言を追加して会期末ギリギリに成立したものの、その直後に日本維新の会の吉村洋文代表が「来年春の府知事選挙と都構想の住民投票の同日選実施を目指す」と宣言したことで、野党は一斉に反発した。

 国対は、こうした独特の国対用語を駆使しながら粘り強く交渉する。時には頭を下げながら、円満な審議や合意形成に向けて汗をかくのだ。

部屋に「いる」ことが仕事

 各党が国会内に陣取る「国対部屋」は、「1議席あたり何平方メートル」という厳格な計算に基づき割り当てられる。本会議場入口のすぐ近く、本館2階の皇居が見える側の一等地に巨大なスペースを占めるのが、自民党国対だ。ちなみに、天皇陛下が国会に来られた際の休憩所として国会内で最も格式の高い部屋である「御休所」は本館3階の中央に位置する。御休所は、1936年の議事堂建設当時、陛下が椅子に座られると窓から富士山が眺められる設計で造られている。

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