<span>第一志望の「かえつ有明」を射止めるまでの最適解とは 功を奏した「KPT作戦」と「個人指導塾との二刀流」</span>

中学受験において、親がどのくらい、どう関わるかは永遠のテーマだ。今回、話を聞いたのは、親からの誘導は一切なく自らの意志で塾通いを始め、第一志望に合格した子どものご両親。この経緯と結果だけを見ればいかにも順風満帆だが、実際には苦労の連続。悩みながら「KPT」によるタスク管理や集団塾・個別指導塾併用への転換など、様々な手を実践することで息子の「自主的な学び」を裏から支えた2人に大いに語ってもらった。

順調な滑り出しと思いきや、ショッキングな事件が……

 息子が中学受験を目指すにあたって、親からの働きかけは「全くなかった」と古谷幸太さん(仮名)と妻の花さん(仮名)は振り返る。東京で生まれ育った幸太さんは私立校で素晴らしい学校生活を送り、親に感謝もしているが、基本的には小学生から塾通いをすることには反対の立場だったそうだ。

「私立に通うとなると年間百数十万円かかるわけじゃないですか。それなら海外留学など、学校外での様々な『体験』にお金を使ったほうが子どものためになると思っていました」(幸太さん)

 花さんも日々の生活に追われ、息子が小学校低学年の頃、その先の進路のことまでは深く考えていなかったという。

「ただ、そろばんや英語など習い事には前向きな子で、楽しんで通っていました。小学3年生の頃に周りの子が塾に入り始め、『自分も行ってみたい』と言ってきたんです」(花さん)

 息子の希望を受け、両親は「やるならどうぞ」というスタンスを貫いた。 花さんが通える範囲の塾をピックアップし、市進学院や早稲田アカデミー、enaなど複数の塾の体験に参加。 最終的に早稲田アカデミー(以下、早稲アカ)を選んだのは息子自身だ。「校長先生の話が分かりやすくて面白かった」のが理由だったという。 こうして、小学3年生の冬から中学受験に向けて早稲アカに通う日々が始まった。

 当初は水泳などと並行しながら習い事の一環のような感覚で塾に通い、志望校も絞らず漠然と中学受験対策を進めていたそうだが、一番下の「Aクラス」から小学4年生になると成績は徐々に上がり、夏休みには上位の「SSクラス」まで昇格。 組分けテストの結果が良く、クラスが上がるたびに本人はとても喜び、幸太さんも「努力が報われるのはいいことだ」と感じていた。

 しかしその矢先、それまでつきっきりで勉強を見ていた花さんが少し距離を置き、自主性に任せるようになっていた4年生の終わり頃に事件が起こる。ある日の午後、花さんが買い物から帰ると、息子はすでに算数の宿題を終えていた。「随分と早いな」、そう思いノートを開くと、答えだけがきれいに書かれていた。

「この問題、どうやって解いたの? と聞いたら固まってしまって。問題集の最後にある答えを写したんだと分かりました」

 花さんはショックを受け、「こんなことをして意味があるのか」「いつからやっていたのか」「テストでも不正をしているのではないか」と様々な不安が頭をよぎった。すぐに早稲アカに電話で相談し、息子が一番信頼していた理科の講師と1対1で話をすることに。その後には、校長との面談も行った。 花さんは当時を振り返る。

「塾側からは、テスト中の不正はないから安心してほしいと言われ、『今の時期にこうした事件が起こってよかったです。高学年になってからだと、取り戻すのに時間がかかることもありますから』とフォローしていただきました。また、講師と話したことで本人も『何のために勉強しているのか』を再認識したようです」

 

スランプ打開策は「KPT」による可視化

「この事件を機に落ち込んでしまったり、モチベーションが下がったりといったことはなく、息子はむしろ中学受験に向けてしっかりと勉強を積み重ねていく決意を新たにしたようでした」

 と幸太さん。勉強時間が増えるにつれて時にしんどそうにする息子の姿を見て「そんなに大変なら塾は2教科に減らして、息抜きにゲームをやればいいじゃない」と声をかけたこともあったが、当人は一度も応じなかったそうだ。花さんは、

「息子は毎日、楽しそうに働いている父の姿を見ていたので、『自分も好きなことを仕事にするためにしっかり勉強しよう』と彼なりに考えていたんだと思います」

 と振り返る。ただ、やる気が成績アップに直結するわけではないのが中学受験の厳しいところだ。小学5年生の夏頃から成績が落ち始め、クラスも下がってしまった。

「スランプから脱する作戦を考えよう、ということで家族会議を開きました。息子が学校と塾以外で週にどれくらい勉強しているかをあらためて計算してみたところ、なんと21時間も勉強していたんです。すごい!と驚き、まずはそのことを褒めました」(幸太さん)

 それだけやっても結果につながらない。他の子はもっと頑張っているのかもしれないが、量を増やすだけでは限界がある。そこで幸太さんが提案したのが「KPT(ケプト)作戦」だった。 これはビジネスの現場でも使われる振り返りの手法で、Keep(良かったこと・続けるべきこと)、Problem(課題点)、Try(改善すべきこと)を定期的に整理し、それをもとに次のアクションを考えるというものだ。具体的には、リビングのホワイトボードを使って曜日ごとに「最低限やること」や「できたらやること」をリストアップし、毎日、終わったらマークをつけていく仕組みを作って実践した。

「子どもがやるべきことを認識し、そこに向かってどう動けばいいかを見える化したわけです。おかげで、息子は明確な目標を持って効率よく勉強できるようになりましたし、親としても毎日ヤキモキし続けることなく、夜に1回だけ『“今日やること”はできた?』『明日はどうする?』と確認するだけで良いので、我々の心の平穏のためにも良かったと思っています」(幸太さん)

 

志望校との出会いと、立ちはだかった「国語」の壁

 勉強法の改革と同時並行で志望校を定めようと学校見学を始め、その中で5年生の3月に初めてかえつ有明中学校を訪問した。

「学校見学会では、案内してくれた中学2年生科学部の女子生徒が自分の言葉で堂々と学校の良さを語っていたこと、教師とフラットにコミュニケーションを取っていたことに好印象を抱きました」

 と幸太さん。かねてより「自分の考えや調べたことをうまく発表できるようになりたい」と話していた息子も同様で、この日を境に第一志望校はかえつ有明と定まった。

 KPTによる自己管理で効率的に勉強に取り組む体制を整え、明確な目標もできた。が、目標達成のためにはなんとしても乗り越えねばならない壁があった。国語が「壊滅的に」苦手だったのだ。

「算数や理科は得意で、小6になってからも伸び続けたのですが、国語の記述問題が全くできず、テストでも時間切れになってしまう状態が続いていました。作文教室に行ったり、単発のドリルをやったりと様々な手を尽くしましたが、結果が出ませんでした」(花さん)

 この時期、花さんのストレスはピークに達していた。息子の成績が上がらない焦りから、怒ってばかりの日々。「もう限界、どうすればいいか分からない」と花さんが幸太さんにこぼしたのが、受験を半年後に控えた小6夏のことだった。

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