ニュースで謝罪や弁明をしている人物を見て「なんであんなに下手くそなのか」と口にした経験のない方は少ないだろう。しかし、ということは画面の中、現在進行形でしくじっている人もまた、その事態が起きるまでは別の人物を見て「なんであんなに~」と思っていたに違いないのである。
しくじりをゼロにするのは無理だとしても、危機管理の場面では極力失敗をしないほうがいいのは当然である。そのためには何を学んでおくべきか。
危機管理コンサルタントの田中優介氏の著書『その対応では会社が傾く プロが教える危機管理教室』冒頭、誰もがやってしまう「五つの失敗要因」に関する解説を見てみよう(以下、同書第一章より。全文は「電子書籍」で公開中)。
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基本的に危機管理に奇策は必要ありません。「良心に従って、当たり前のことを当たり前に行う」ことが大切です。では何故、政界、財界、芸能界、スポーツ界の著名人の皆さんが、ことごとく失敗を重ねてしまうのか? 日常の仕事においては、極めて緻密で有能な方々が……。
失敗する背景には様々な理由があるでしょう。しかし、危機というものが非日常的であり、突然襲ってくるからに違いありません。ですから、思い付くままに“行き当たりばったり”な対応をしてしまうのです。まるで、初めて行く場所へ、勘に頼って車を走らせるようなものです。そのうちに方向感覚も失って、自分の居る場所すら分からなくなってしまいます。
二〇二一年に無免許運転が発覚したのち、常習犯であることが発覚した木下富美子元東京都議会議員は、まさにそんな様子でした。記者会見などでの彼女の対応を見た多くの国民は、「いったい何をしたいのか?」「何を言っているのか?」と不思議に思ったでしょう。
しかし、当の本人は至って真剣なのです。その象徴的な発言をご紹介しましょう。
まずは辞職の会見でのことです。彼女は「仕事をしたくても、させてもらえない理不尽な現実があった」と不満を漏らし、辞職に傾いた気持ちを語りました。本音かもしれませんが、謝罪の場で「理不尽」などと言う意図が分かりません。
続いては第一回目の公判の場面です。検察から交通違反を重ねた理由を聞かれると、「おっしゃるほど(違反は)沢山でしょうか?」と逆に問い掛けたのです。裁判官に与える悪印象を考えなかったのか? その心境が理解できませんでした。
この二つの発言は、危機管理を〝行き当たりばったり〟で行うことの問題点を示している。そんなふうに私の目には映りました。それと同時に「彼女の手元に危機管理の地図、すなわち理論があれば避けられたはずだ」とも思いました。〝謝罪会見も法廷も常に解毒を念頭に置くべし〟という危機管理の理論を知っていれば、異なる対応ができたはずです。
それでは、彼女の二の舞いを防ぐ為に、危機管理における失敗の要因と成功の秘訣を、高い位置から見渡してみましょう。