<span>持たざる国の公債と戦争</span>

 高橋是清。昭和11(1936)年の二・二六事件で殺された。時に岡田啓介内閣の蔵相。彼はなぜ青年将校に恨まれたか。ひとつのきっかけは昭和10年にあろう。昭和11年度の予算編成。日中戦争は目前。軍備増強待ったなし。中ソに備えねば。対米戦略も重要。しかるに財政は厳しい。昭和4年以来の世界大恐慌が響き続けている。歳入はなかなか戻らない。なら公債の新規発行か。国の借金を増やす。しかし公債の償還や利払いの費用は歳出の4割に達する勢い。高橋は公債漸減主義を唱えた。国の赤字を減らそう。「健全財政」を目指そう。多少円高に振れても良い。確かに公債を新たに大量発行できなくはないのだ。償還費や利払い費はまだ当分は何とかなる。でも、政府から軍需産業を通じてもっとお金をばら撒いて市中に溢れさせれば、円の値打ちは下がって物価高が制御できなくなろう。悪性インフレだ。円安も進む。宜しからず。高橋の方針だった。

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