米国とは異なるECBの狙い
欧州中央銀行(ECB)は9月21日、現在導入している資金決済システムである「T2(旧ターゲット2)」を補完する銀行間決済の仕組みとして、ポンテス(Pontes)と呼ばれるプラットフォームを発足したと発表した。これは、いわゆる“中央銀行デジタル通貨(CBDC)”に準じる仕組みで、銀行間の大口決済に用いられるホールセール型に近しいものだ。
ポンテスは小口決済に用いられるリテール型のCBDCである「デジタルユーロ」とは異なる。その実証実験もECBは進めているが、今回リリースされたポンテスはホールセール型CBDCに準じる。
米国の場合、民業圧迫や取引履歴を中銀が管理することへの懸念から、リテール型のCBDCの発行には消極的である。ただし米国も、ポンテスのようなホールセール型CBDCの発行余地は残している。
欧州連合(EU)ではすでに民間の大手金融機関が分散型台帳(管理者を置かずにネットワーク上の複数の管理者が取引の記録を共有して管理するデータベース)による大口決済を行っている。これは“トークン”(暗号化した電子情報)により行われているが、こうした取引に、中央銀行たるECBがポンテスを通じて参入することになる。
ではなぜECBが参加するのか。民間の大手金融機関による取引は当然ながら事業者同士のやり取りであるから、信用リスク(債権が回収できないリスク)や流動性リスク(期日までに取引ができないリスク)を抱えている。ゆえに大手金融機関や決済業者はネットワークがダウンすることがないように心血を注ぐが、リスクはゼロにならない。
そうした大口決済が抱えるリスクをさらに低下させつつ、取引を円滑化させることが、ECBがポンテスを発足させた理由となる。ポンテスを発足させる前にECBは域内の多くの金融機関や中銀、決済事業者との間で実証実験を重ねており、満を持してのリリースとなった。今後ECBは、ポンテスを2028年までに完全に稼働させる方針である。
そして、ポンテスは既存の大口決済システムであるT2と接続している。民間金融機関は、ポンテスとT2の両方を用いて大口決済を進めることができる。こうした意味で、両者は補完と競合の関係にある。そもそも大口決済の円滑化を目的に開発されたのがホールセール型CBDCであるから、その経緯が反映された形だ。
ステーブルコインに対する牽制
もう一つ、ECBがポンテスを稼働させ、実質的なホールセール型CBDCを発行した理由がある。それは民間事業者が発行するステーブルコイン(法定通貨との間で固定レートによる交換を保証した暗号資産)との付き合い方という観点だ。これには様々な視点が含まれている。