<span>何もしないことのリスク――戦場から考える企業の意思決定</span>
ウクライナでは無人機の課題が2~3週間で改善され、再び現場に投入されている[ウクライナとドイツの合弁企業で製造される無人機=2026年2月13日、ドイツ・ミュンヘン](C)ウクライナ大統領府 https://www.president.gov.ua/

リスクとは何かを「する」ことだけではなく、「何もしない」ことによっても生じてくる。ウクライナの戦場において週単位で続く無人機(ドローン)の進化は、判断を留保する間にも市場が消えかねない企業経営にも重要な教訓を与えている。人をどう育てるか、組織の縦と横をどうつなぐか、そして変化を前に誰が決断するのか。革新の速度が増すほどに、この三つが重要になる。

速さと質の優先順位とは

 ウクライナの戦場で、ロシアの無人機が驚くべき速さで進化している。注目したいのは、無人機そのものの性能ではない。その改良の速さ、である。戦場で問題が見つかると、その情報が開発側に伝わり改良する。そして、改良された無人機が、再び戦場に投入される。現場では、このサイクルが週単位で繰り返されているという。

 なぜ、これほど速く意思決定できるのか。最近、二つの興味深い論考を読んだ。

 一つは、米戦略国際問題研究所(CSIS)のKateryna BondarとNicole Erreraが9月4日に発表した「From Shahed to Geran」である。この論考では、ロシアがイランの「シャヘド」を原型として発展させた攻撃型無人機「ゲラン」の進化を分析している。

 この論考を読むと、ロシアの強みが必ずしも個々の技術の高さにあるわけではないことが分かる。分析は、こうである。無人機製造に関し、二つの工場が並行して異なる設計を試す。製造に必要な部品に関し、中国市場から入手できる商用電子部品も積極的に使う。戦場の運用者から要求が戻ってくれば、その要求を取り入れ技術者が改良する。それらを採用した試作品を実戦で使い、効果が不十分であれば切り捨てる。そして効果があれば無人機を標準化し、生産に反映する。

 CSISが強調するのは、こうしたフィードバックが「年」ではなく「週」の単位で回っていることである。ロシアは、最初から完璧なものを作ろうとしているのではない。使いながら改良する。完璧を待たず、改良を続ける。

 もちろん、戦時下のロシアの方法をそのまま評価するつもりはない。戦場での試行錯誤には人的犠牲が伴う。それを企業の製品開発と同列に論じることもできない。それでも、その適応の速さから考えるべきことは多い。重要なのは、技術そのものだけではない。本稿では彼らが現場から学び、それを次の行動に移す速さに着目したい。

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

注目の特集

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの電子書籍

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する