特集|教育

Vol. 1

【2027年中学受験】「2/1午後」がカギ――プロが読み解く、御三家最新動向から注目中堅校の実名まで

2026年10月26日


<span>【2027年中学受験】「2/1午後」がカギ――プロが読み解く、御三家最新動向から注目中堅校の実名まで</span>
麻布中学・高等学校(東京・港区)

2027年の入試に向けて残すところ3か月となった。長期的なトレンドにも少しずつ変化がみられることに加え、短期的な上下が生じやすい人気校の動向についても、注目すべきポイントがいくつかある。「データ」と「プロの視点」の2つから、最新動向を読み解いていく。

「国際教育」に岐路、大学入試の動向も影響

 受験者数、受験率ともに高止まり状態が続く中学受験市場は、2027年入試も大枠は変わらないとみられている。変動要因があるとすれば、26年度から私立高校の授業料に対する国の就学支援が手厚くなった点だろうか。中学受験の事情に詳しい森上教育研究所代表の森上展安氏によると、

「この夏に行われた首都圏4大模試(SAPIX、四谷大塚、日能研、首都圏模試センター)の受験者数をみると、単純比較で前年から5%ほどの増加がみられます。模試日程などの諸条件を考慮すると、実質的には2~3%程度の増加が、現時点では見込まれています。この増加分はたしかに就学支援金の影響も考えられますが、東京都では24年度から実質的に私立高校も授業料が無償化されていましたし、そもそも支援金の有無にかかわらず受験する層が大半といえる。焦点は、神奈川、千葉、埼玉の周辺3県にどの程度影響が広がるか、といったところでしょうか」

 市場としての活況ぶりは変わらない一方、人気校のトレンドには移り変わりがある。

 特にここ数年は「国際教育」に強みを持つ学校が志願者を集めやすい傾向にあった。学内での国際教育に加え、海外留学や海外大学への進学などにも力を入れる、渋谷教育学園渋谷、同幕張、広尾学園、三田国際科学学園などがその筆頭だ。

 しかしこの円安下で欧米諸国への留学費用が大きくかさむ事態となっている。「留学先が多様化するだけでなく、留学自体の需要が低下するなど、一定の影響は考えられる」と森上氏が指摘するように、国際教育を特色として謳う学校側にも、一つの転換点が訪れていることにも留意しておくべきだろう。

 追手門学院大学客員教授で、全国5000の塾に取材した実績をもつ教育ジャーナリストの西田浩史氏はこう指摘する。

「海外大学という選択肢が広まってきたことに加え、学校推薦型選抜や総合型選抜などのいわゆる『年内入試』、あるいは内部進学など、大学に入学するルートが多様化してきたことを受け、従来のような『一般選抜だけに強い学校』よりも、複数のルートに対応できる柔軟性を持った学校が好まれるようになってきています。大学入試制度自体が今後も変化していく可能性があるとみられているため、その傾向はより強まっていくと思われます」

 その意味で、「人気校は二手に分かれていくのでは」と西田氏はみる。

「男子・女子ともに“御三家”を中心とした伝統的なブランド校と、複数ルートに柔軟に対応できる改革を進める新興校。人気の在り方がこの二つに分かれていくのではないでしょうか。その意味でこれから大変になるのは、駒場東邦や海城、吉祥女子など、御三家に次ぐブランド校として君臨してきた学校群でしょう。“御三家の次”というイメージが浸透している一方、強い既存の教育文化があるからこそ、新興校ほどのスピーディな改革が進めやすい環境とも言いづらい。ブランドだけでなく中身で学校が選ばれる時代に、独自色をいかに出していくか注目されるところです」

 共学化や大学の系列化といった再編の動きも加速している。学校側もまた、激しい競争を勝ち抜くべく試行錯誤が強いられる時代なのだ。

情報公開を強化した男子校2校

 こうした背景事情を踏まえつつ、より短期的な視点で、27年入試の動向を探っていこう。

 まずは「情報公開」という姿勢が人気を押し上げている男子校の2校だ。

 西田氏によれば、

「昨今、東大の合格者数で“低迷”が指摘されていた武蔵は、積極的な情報発信や塾とのコミュニケーションの強化などが奏功して、人気が復活してきています。そもそも、御三家の中でも“東大一辺倒”に寄らない自由な校風が武蔵の特色であったのですが、海外大学との提携を広げたり、系列の武蔵大学との連携を強めて高校の授業を充実させたりと、良い意味で伝統校らしからぬ改革が進んでいる印象です」

 一方、森上氏は、

「これまで情報公開にあまり積極的ではなかった慶應義塾普通部が、24年入試から合格最低点を公表するようになったりと、その方針を転換させつつあります。これによって志願者数が伸び、26年は一時的に志願者が減少したものの、上昇基調には乗っているものと思われます」

 こうした要因が周囲の学校にも影響を及ぼすのが、“中学受験界の地政学”だ。

「日吉に位置する慶應普通部の志願者が増えるということは、神奈川県からの受験者も多い麻布や駒場東邦が割を食うことになります。特に麻布はここ3年程の受験者数の減少が大きい。この構図が27年で急変することは考えづらいですね」(同)

 武蔵と麻布――。男子中学受験界を代表する2校はいま、一つの岐路に立っているといえそうだ。

 ちなみに神奈川では、男子・女子ともに従来の御三家の構図が崩壊しつつある。森上氏は、

「フェリス女学院よりも洗足学園、栄光学園よりも聖光学院の方が入試難度が高くなりつつあるのは、ブランドよりも中身や機能の面が重視されるようになってきていることの表れでしょう。特に聖光は、東大をはじめとした大学進学実績を重視した方針が支持を集め、それが結果につながる好循環を生んでいる。これもまた一つの戦略といえます」

カギは「2/1の午後」

 もう一つ、昨今のトレンドをつかむのに重要なファクターが、「2/1の午後」だ。同日午前に人気校の受験日程が軒並み設けられている一方、午後は「供給」が少なく、学校側にとっては競争の少ない市場だった。ここに目を付けた学校は少なくなく、その好例として森上氏は山脇学園を挙げる。

「19年、国語1科・算数1科の選択型の午後入試を新設した同校は、これを機に大きく志願者数を増やすことに成功しました。同時期に午後入試に参入した巣鴨や世田谷学園なども同様で、もともと『2/1午後』の象徴的存在だった東京都市大学附属なども含め、活況を呈するようになってきています」

 27年入試では、ここに城北、大妻、鎌倉女学院が加わる。

「特に上位層の併願先の定番である城北が参入する意味は大きい。午後に有力な併願校が入ることで、午前に強気の難関校受験を選択する心理的ハードルが下がる効果も考えられます。併願戦略を考える上での大きなポイントになると思います」(同)

 一方、城北は2/4入試を廃止、大妻は2/5入試を廃止して2/1午後に参入するという面にも目を向けなければならない。つまりは2/1午後入試の盛り上がりとは、受験日程全体の前倒し傾向を表すのだと、森上氏は指摘する。

「こうした早期化がみられる以上、2/2午後までに一つは合格を確保しておくという戦略を立てておくのが現実的だと思います。2/1午前の第一志望に合格する生徒はむしろ少数なのですから、本人が楽しく通える第2志望、第3志望をポジティブに備えておくことがより重要になってくるでしょう」

「人」から読み解く高コスパ校

 受験家庭にとって特に気になるのは、入学難易度の割に良い教育が期待できる、または大学進学実績に優れた「高コスパ校」だろう。

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