連載|教育

Vol. 9

「受験テクニックは…」「親の負担は…」通った親子が明かす、新進気鋭の中学受験塾・グノーブルは難関校合格の最短ルートといえるのか

2026年11月7日


<span>「受験テクニックは…」「親の負担は…」通った親子が明かす、新進気鋭の中学受験塾・グノーブルは難関校合格の最短ルートといえるのか</span>
本社のある渋谷校舎

SAPIXをルーツにもつ中学受験塾として名を馳せるグノーブルだが、その実態はベールに包まれている部分も多い。約3年間をグノーブルに費やし難関校受験に臨んだ親子が、反省点も交えながら忌憚なき本音の体験談を明かした。

小学生の塾通いは「かわいそう」なのか

 3度目の入塾試験に合格し、晴れて娘のグノーブル入りを果たしたのはもう5年近く前になる。

「『SAPIXの少人数制のような塾で良い』と知り合いに勧められたというだけで、そこまでグノーブルにこだわりがあったわけではありません。ただ、簡単に『落ちたから別の塾へ』という形にはしたくなかった。結果的には、頑張れば成果につながるという小さな成功体験にはなったかなと思います」

 そう当時を振り返るのは、首都圏在住の松野隆介さん(仮名)。自身が一般的な公立中出身であることがかえって、娘の中学受験を考えるきっかけになった。

「正直、自分は公立中でそんなに楽しくはなかったんですよね。だんだん不良っぽくなっていく同級生のノリがあまり好きじゃなかったりして。娘はどうやら勉強が嫌いではなさそうだったので、気の合う仲間に囲まれた環境で中高の6年間を過ごしてもらえたらと思い、まずは塾に入ってみることにした感じです」

 小学生にどれだけ勉強をさせていいものかという不安もあったが、塾での授業には、良い意味で想定を裏切られた。

「とにかく授業が面白いと、娘は塾に行くのをいつも楽しみにしていました。国算理社の全科目において『楽しい』と感じさせることが徹底されていた印象です。たとえば国語。保護者会では先生が『前回扱ったこの文章がいかに素晴らしいか』を熱弁するような具合で、実際の授業も、深く読み、一生懸命書くことが重視されていましたね」

 いわゆる“受験対策”に抱いていたイメージとはかけ離れた内容で、知的好奇心は刺激されるばかりだった。

「授業で取り上げられた文章で気に入ったものがあれば、原著を購入して渡すようにしていました。すると娘はすっかり本好きに。それだけでも大きな財産になったと感じています」

 その半面、「受験テクニック的な割り切りは弱く、深読みしすぎて間違えるクセは最後まで抜けなかった」と松野さんは補足する。

「効率よく合格するための最短コースといえるかどうかは、人によるかもしれません。学年が上がるにつれて受験対策としての色はどんどん強くはなっていくものの、『本質的な学び』を重視する方針には変わりありませんので。ただ、中学受験に臨む子に対して『そんなに早くから塾に通っていてかわいそう』というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも娘にとっては、楽しく通い続けられる一つの居場所になっていたと思います」

受験校選びは「20超の学校をランク付け」

 学校選びの方針についても、同塾の姿勢には賛同できる部分が多かった。

「大手塾に通う人からは、偏差値ありきで受験校を決めたり、場合によっては塾から『ここも併願しないか』などと、合格実績を上げたい意図が透けてみえることもあると聞きます。そういうことはグノーブルでは特段なく、素直に行きたい学校をこちらで選び、そこへ行くための後押しに全力をあげてくれていた印象でしたね」

 そのような塾の方針のもと、主に小4から小5にかけて、松野家では20以上の学校を直接見て回ったという。父親だけで見学した学校も一部あるが、

「なるべく娘に直接見てもらい、親が感想を述べる前に『どこが良かった?』『どこが微妙だった?』などと尋ね、娘の重視するポイントがだんだん見えていった感じです。運動好きなのでグラウンドが広い学校だったり、通学ルートでなるべく人混みを避けられそうな学校だったり、自由な校風の学校だったり……。こうした点からランキングをつけていき、受験日程が重なったら上位の学校を優先、という志望校の決め方をしました」

 こうして決まった「第一志望群」は計3校。いずれも受かれば“100点満点”と思える難関校だが、受験日程をうまく分散させることができた。徹底した学校選びを重ねただけに、1月に受験する併願校も行きたいと思えるポイントがしっかり見えていた。

夏休み明けに成績が急落

 そんな松野家にとって、本番が近づくまでは、受験生活に苦を感じるシーンはそれほど多くはなかったという。

「学年が上がるごとに、娘の勉強量も、親が勉強をみないといけない負担も大きくなっていったとはいえ、小5くらいまでは“それなりに遊んでそれなりに勉強して”といった感じで、さほど苦しかった感覚はありません。鬼門といわれる小6の夏休みも、たしかに勉強量自体が一層増えて大変でしたが、学校は休みでしたし、全部の習い事をやめることもなく乗り越えられました」

 本当の苦労は、小6の夏休み明け以降に重なった。松野さん曰く、「今思えば」という視点で大変さの度合いを数値化すると、ざっくり以下の通りになる。

小3:10%
小4:50%
小5:60%
小6の8月まで:80%
小6の9月以降:150%

「夏休みが明けると、学校に通いながら、志望校別の講座も含めると週4で塾に通わなければならなくなり、また自宅でも教材の復習や過去問などに追われて、一気に負担が増した気がします。グノーブルの教材はほとんどがプリントなので、親として学習を管理するだけでも一苦労な毎日でしたね。さらにうちの場合、学校生活で嫌なことが重なり、娘のストレスはもう相当なものでした」

 塾からはずっと「現時点の成績にとらわれる必要はない」とは言われ続けていたものの、グノーブル内で60程度あった偏差値が、秋には50程度にまで急落。それまでは第一志望群の一つに合格判定を得たこともあった模試の判定も一気に下がった。

「こういうとき、いくらでも相談に乗ってくれた塾の存在はありがたかったですね。皆さん忙しいはずなのですが、対面でも電話でも、先生の方から会話を切り上げようとする素振りを感じたことは一度もありませんでした。娘自身も、学校で悩みを抱える中、むしろ塾が自分の居場所になっていたようで、救われた面は大きかったと思います」

 親としても、娘の好きな音楽を流しながら一緒に勉強をしたり、好きなお菓子を大量購入したりと、「とにかく娘が勉強しやすい環境をつくるために思いつくことはなんでもやった」――そう松野さんは述懐する。

秋以降の復活のカギ

 とはいえ模試の成績は簡単に好転したわけではない。また、塾の方針で9月から着手した過去問も、10月が終わってもなお驚くほどに解けないままだった。

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