コンプライアンス意識が高まり、ハラスメントに対して厳しい目が向けられるようになった結果、「性的な話題」を口にすることは極めてリスクの高い行為となった。実のところ、職場や知人とそういう話をする人は、非常識あるいはウカツな人間だと見られるだけでなく、ことによれば社会的に抹殺される時代になった。
一方で「性的なこと」への関心が世の中で低下しているわけではないし、人間の本能に基づく極めて根源的、かつ深淵なテーマであることに変わりはない。
作家・橘玲氏のベストセラー『言ってはいけない』では、日本のほとんどのメディアがおびえて取り上げないような「真実」を数多く紹介している。いずれも欧米の科学者などの論文をもとにしており、決して思いつきの与太話の類ではない。
その中からここでは「女性がエクスタシーの時に叫ぶ理由」についての論考をご紹介しよう。実はこの論考は「報道ステーション」降板後の古舘伊知郎氏がかつて民放番組で扱ったこともある話題だ。しかし、そこはダイジェストを放送するのみ。興味本位のテレビにはできない論考の一部をお届けしたい。
性的行動には人類の生き残りをかけた深い生存戦略があったのだ。
(以下、『言ってはいけない』から抜粋、一部を加筆し、再構成しました)
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心理学者のクリストファー・ライアンと精神科医のカシルダ・ジェタは2014年に刊行された『性の進化論 女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?』(山本規雄訳/作品社)で「ヒトはテナガザルと同様に一夫一妻である」という通説に疑問を投げかけた。
霊長類には、一夫一妻制の種(テナガザル)もいれば、一夫多妻制の種(ゴリラ)、乱婚の種(チンパンジーやボノボ)もいる。
このうちテナガザルは進化のうえではヒトとは関係が薄い。もっとも関係が近いのはチンパンジーやボノボなのだ。
それなのに、なぜヒトとテナガザルを同じくくりにするのか。さまざまな霊長類の生態を踏まえて、ライアンとジェタは次のように問う。
「霊長類のなかで、発情期にかかわらず交尾し、性行為をコミュニケーションの道具に使うのはヒトとボノボだけだ。そのボノボは、一夫一妻制のテナガザルや一夫多妻制のゴリラより進化的にはるかにヒトに近い。だとしたらなぜ、ヒトの性行動を考えるときにボノボを基準にしないのか」
そして、彼らは「ヒトの本性は一夫一妻制や一夫多妻ではなく、(ボノボと同じ)乱婚である」と宣言した。つまり現在世界で採用されている制度(一夫一妻制や一夫多妻制)は人間の社会の産物に過ぎない、というのだ。